水たまらぬダム…想定以上の浸透、給水延期に農家が批判

3月2日3時3分配信 読売新聞

 農林水産省が熊本県産山(うぶやま)村に建設している農地かんがい用の大蘇(おおそ)ダムで、ダム湖の水が想定以上に地下に浸透して計画通りに貯水できず、2009年度から予定していた給水を出来ない事態となっている。

 同省は、08年度の事業完了を1年先延ばしして対応を検討するが、給水開始の見通しは立っていない。同省の不手際に対し、受益農家や識者からは批判の声が上がっている。

 地元の同県阿蘇市などによると、ダム湖の地質は主に阿蘇山の噴火に伴う火砕流の堆積(たいせき)物で水を通しやすい。同省は、同規模のダムと比べて約3倍の約730か所でボーリングを行うなどの地質調査を実施したうえで着工。浸透対策として、ダム本体周辺やダム湖の岸で地中にセメントを注入するなどした。

 しかし、ダム本体完成後の05年から始まった貯水試験で、1日の浸透量が想定(2500トン)の16~2倍の4万~5000トンに上り、農地への給水に支障が生じることが判明。08年2月頃に関係自治体に説明し、浸透問題の調査を実施したが有効な手立ては見つからずにいる。09年度政府予算案ではダム関連費として1億9000万円を計上。引き続き浸透状況を調べ、追加工事の必要性を検討する。

 今後の見通しについて、地盤工学を専門とする北園芳人・熊本大教授は「まず、どこから漏れているか特定する必要がある。合成樹脂などを流し込むことで浸透を防ぐことは可能だが、相当の時間と費用がかかるだろう」と推測する。

追加工事負担4県市「困難」
 ダム完成後は土地改良法の規定に従い、事業費の一部として大分県が約66億円、同県竹田市約23億円、熊本県約19億円、阿蘇市が約5億円を負担する見通し。追加工事を行えば負担は増すが、4県市は「財政状況は厳しく、新たな負担は困難」と声をそろえる。

 受益農家でつくる荻柏原土地改良区(竹田市、組合員約700人)の山村英治事務長(55)は「どうして水がたまらないダムになったのかを農家にきちんと説明し、早く対策を講じるべきだ」と訴える。同省九州農政局は「事前の地質調査では、これほどの浸透は予見できなかった。水を待ち望んでいる方々には大変申し訳ない。対応策を整理したい」とコメントしている。(佐々木浩人)

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 大蘇ダム 阿蘇外輪山東部の熊本県阿蘇市、産山村、大分県竹田市にまたがる農地2158ヘクタール(受益農家1445人)へのかんがい用水供給を目的とする。1979年度に事業が始まり、産山村の標高675メートルにある大蘇川上流に2004年度、ダム本体(高さ約70メートル、長さ約262メートル)が完成した。ダム湖は満水時面積0.28平方キロ・メートル、貯水量430万トン。総事業費は当初130億円だったが、地盤強化工事などで費用がかさみ、593億5000万円に膨らんでいる。事業は87年度に完了予定だったが、20年以上ずれ込んでいる。
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by deracine69 | 2009-03-02 03:03 | 行政・公務員  

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