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<アジア通貨危機>10年経過 「中国発」再来に懸念

7月8日1時47分配信 毎日新聞

 【北京・大塚卓也】タイの通貨バーツ急落を機にアジア各国の経済が大混乱に陥った通貨危機から10年がたつ。危機に見舞われたタイ、マレーシア、インドネシア、韓国などは、この10年、再び国外への資金流出が起きないよう経済、金融の改革を進め、成長軌道を回復。厳しい資本規制を敷いていたため通貨危機を免れた中国は、世界4位の「経済大国」に急成長した。だが、バブルの様相が深まる株式市場は乱高下し「中国発の危機」につながる懸念はぬぐえない。通貨危機の再燃はないのかを探った。

●株式市場に不安感

 「健全な金融システムと企業経営が海外からの投機攻撃を防ぐ基礎になる」。中国人民銀行の呉暁霊副総裁は6月、アジア危機10年を主題にした講演でこう指摘し、海外との資金の出入りを規制する資本自由化や人民元の変動相場制移行は、国内改革と歩調を合わせて進める考えを強調した。

 10年前はヘッジファンドが為替市場でバーツやインドネシアの通貨ルピアを大量に売ったことが危機の引き金になった。香港も株式市場の急落から混乱に陥った。中国は今も為替市場で海外資金の取引を厳しく規制しているが、米国などの要求に応じ株式市場では規制を徐々に緩めてきた。

●依然弱い経済基盤

 中国当局は外資系金融機関の中国市場での株式・債券投資に総額100億ドル(1兆2300億円)という限度額を設けていたが、今年5月、300億ドルへの拡大を決めた。ただ、株式市場に占める海外資金の規模は数%に過ぎず、海外との資金の出入りの大半は工場建設などの直接投資や貿易決済の「実需」だ。

 規制を続けるのは、国内の経済基盤が依然弱いためだ。高成長の原動力は米国などへの輸出だが、その6割を外資系企業が占める。中国企業の国際競争力は弱く、上場企業の情報公開も遅れている。関係会社間の不透明な資金融通など不祥事の種もつきない。海外からの株式投資を完全に自由化すれば、ヘッジファンドの「攻撃材料」には事欠かない実情がある。

●五輪後の流出警戒

 中国国家外貨管理局は6月、国内外の銀行を集めて外貨取引の検査結果を伝え、一部銀行が規定に違反し、海外からの投機資金が不動産や株式市場に流れていたことを厳しい口調でとがめた。香港は中国本土との規制が緩和されているが「利殖の機会を探す華僑系の投機資金が流入する抜け道になっている」(金融関係者)と指摘され、監視が強化される見通しだ。

 来夏の北京五輪や10年の上海万博を控え、高速鉄道網整備が急ピッチで進み、ビル建設ラッシュも続く中国だが、五輪や万博が終わればペースダウンは確実なだけに、海外資金の流出入に対する実効性のある監視体制の構築が課題になる。

 ◇危機対応策も徐々に

 通貨危機後、アジア各国は外貨準備を大幅に積み増した。00年には緊急時に東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国と日中韓が、域内の2国間で互いに外貨を融通しあう通貨スワップ(交換)協定「チェンマイ・イニシアチブ」を結んだ。今年5月には、この協定を補強するため、外貨準備の一部を拠出して通貨危機の際に一括して支援する新しい枠組みを構築することで合意した。投機資金の流出に対応する安全網が構築されつつある。

 しかし、新しい枠組みは今後も曲折が避けられない。13カ国の拠出金は最大790億ドル(約9兆7000億円)とする構想もあるが、拠出割合や運営方法をめぐる各国の主導権争いは必至だ。

 通貨危機時、各国に不良債権処理など構造改革を条件に資金支援を行った国際通貨基金(IMF)の荒療治に各国から強い反発が上がった。日本を含む一部から「アジア版IMF構想」が浮上し、IMFを主導する米国が激しく反発して、構想をつぶした経緯があるだけに、今後、米国がどのようにかかわるかも注目されそうだ。

by deracine69 | 2007-07-08 01:47 | 中国  

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