安倍首相 何のために続投するのか

7月31日 信濃毎日新聞 社説

 「結果を厳粛に受け止めている」「政治空白は許されないとの認識の下に…当面の重点政策に全力を挙げて取り組む決意だ」

 これは1995年7月の参院選で大敗した後、続投する理由を説明する村山富市首相(当時)の言葉である。きのうの安倍晋三首相の記者会見が、村山会見と二重写しになって見える。

 「反省すべき点は反省しながら、結果を出していくことで責任を果たしていく」。辞任論がくすぶる中、安倍首相はこう述べた。

 「反省すべき」こととは、年金記録不備や「政治とカネ」の問題に対する対応だと説明した。その上で、「改革の影の部分」に光を当てるための「成長力底上げ戦略」や「再チャレンジ支援策」で経済成長につなげたい、と述べている。

 首相がはっきりとは答えなかった質問がある。再チャレンジ支援などの課題は安倍首相自身でなければできないのか、という質問だ。

 参院選には、政権選択の選挙と言えない面があるのは事実である。半面、選挙に示された民意を軽視するのは許されない。

 1989年の参院選では宇野宗佑首相(当時)、98年には橋本龍太郎首相(同)が敗北の責任を取って辞めている。自民党の獲得議席はそれぞれ36、44だった。

 自民党が今回、獲得した議席は37である。辞任論がくするぶのも無理はない。

 「安倍カラー」が打ち出せなかった選挙戦だった。会見で首相は、憲法問題を十分議論できなかったことを残念がった。年金や「政治とカネ」をめぐる説明に追われて、憲法問題は持ち出そうにも持ち出せなかったのが実情だった。

 参院で与党の議席は過半数を割り込んだ。苦しい政権運営が待っている。憲法を政治のテーマに持ち出すのは、ますます難しくなる。

 首相は会見で、これまで掲げてきた旗印「戦後レジーム(体制)からの脱却」にまったく触れなかった。今後は「安倍カラー」を封印して政権運営に臨むつもり、と受け取る人もいるだろう。

 そうなると、疑問はますます膨らむ。何のための続投か、首相はこれから何をするつもりなのか-。

 選挙に敗れ、求心力に陰りが生じた首相が続投しても、目立った成果を挙げるのは難しい。村山元首相は参院選に負けた半年後に政権を投げ出している。

 首相は会見で早期解散をあらためて否定したものの、総選挙待望論はくすぶり続けるだろう。政治の流れから目が離せない。
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by deracine69 | 2007-07-31 08:00 | 政治  

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