安倍敗北、ロシア流解釈 弱体化歓迎 躍進民主に秋波

2007/08/02 07:39 産経新聞

 【モスクワ=内藤泰朗】ロシアは、参院選で惨敗し厳しい政権運営を迫られる安倍晋三首相が今後、日露両国懸案の北方領土問題までは手が回らず、交渉が大幅に先送りされるとみている。躍進した野党・民主党が、領土問題でロシアに譲歩する用意があるのかどうかに、関心を示しているようにも見える。

 7月29日投開票の参院選で自民党が惨敗した模様は、ロシアの各テレビなど主要メディアが、かなり大きな扱いで報道した。それだけロシアが日本の政治を注視するようになったわけだ。

 今回の選挙結果について、ロシアの日本専門家たちは一様に「日本の国家戦略の本格的な変更は期待できない」(ロシア科学アカデミー極東研究所のパブリャチェンコ日本研究センター所長)などと述べ、日露関係に大きな影響は与えないとの冷めた見解を示している。

 ロシアのプーチン政権は領土問題で譲らぬ姿勢を示し、すでに平和条約締結交渉は凍結状態になっている。さらに参院選の結果から、日本の政局はロシアどころではなくなった。したがって、両国関係も「変化なし」という見方だ。領土問題を半ば永久に先送りしたいプーチン政権にとって、これは歓迎できる“事件”である。しかも、米国との関係を最重視し、対ロシアでは強硬な姿勢を示して平和憲法を改正しようとする安倍首相の弱体化が加速するのは避けられない状況なのだ。

 ロシアが今強く意識しているのは、政権奪取に向けて勢いづく民主党など野党勢力に、鳩山由紀夫・民主党幹事長ら親ロシア的な政治家たちが多く含まれていることだろう。それは「野党は日本史に新たなページを開こうとしている」(国営テレビNTV)や「日本は野党が勝利を祝うが、安倍首相は辞任したくない」(大手日刊紙RBK)といった報道ぶりにも表れていた。

 安倍政権の求心力が弱まるにつれ、ロシア側が鳩山氏ら民主党の有力議員らにさまざまな形の秋波を送ってくることは間違いない。

 ロシアが今回の参院選の結果に高い関心を示したもう一つの理由としては、年金記録の不備や閣僚らの相次ぐスキャンダルなど、ロシア国民にも身近でわかりやすい問題で自民党が惨敗したことがあげられる。

 ロシアでは、今年12月の下院選、そして来年春の大統領選と、2つの重要な政治日程を控え、政治への関心が高まっている。そこで、選挙で大敗しても辞任しない安倍首相の姿勢についても、独特のロシア流評価がある。

 ロシア国民の多くは自らの体験から「政権交代は政治の不安定化や新たな汚職の温床を生み出すだけで、いいことは何もない」と思っており、安倍首相の続投表明を肯定的に見る傾向もある。

 ロシア下院議席の7割近くを占めるプーチン大統領の翼賛与党「統一ロシア」(グリズロフ党首)は、その創設に当たり戦後の日本政治を事実上独占してきた自民党の機構や党綱領などを参考にした。ロシアにも同様の主導政党を創設し、安定した政権運営を図ろうというのが最大の目的だった。

 「統一ロシア」の幹部が、かつて記者に「一党独裁体制を敷いてきたソ連共産党ですら崩壊した。われわれもいつかは落日を迎えることになるだろう」と漏らしたことがあった。その文脈からすれば、プーチン・ロシアにとって自民党の敗北はひとごとではない。
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by deracine69 | 2007-08-02 07:39 | 政治  

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