【記者が読む】1円領収書 規正法改正は本気か

8月11日16時8分配信 産経新聞

 参院選で自民党大敗の一因となった政治とカネの問題をめぐり、「1円領収書」が迷走している。安倍晋三首相が政治資金規正法を再改正するよう指示したことを受けて、自民党執行部が議員の事務所費など1円以上のすべての支出に対し、収支報告書への領収書添付を義務付ける方針を打ち出したのが発端。予想にたがわず、党内からは異論、反論が噴出し、党内の意見集約は内閣改造後に先送りにされることになった。政治家が自らを律し、そのための法律を政治家が作ることがいかに困難なことか、虚しささえ覚えるではないか。

 領収書については、先の国会で難航の末、政治資金管理団体の支出1件5万円以上に付き添付を義務付けた改正規正法が成立したばかりである。閣僚の事務所費問題がクローズアップされるなかで、国民のふつうの金銭感覚からすれば「何で5万円からなのか」と怒りを超えて失笑さえもれた5万円という数字だが、国民のそんな空気が読めない自民党の鈍感力が参院選の結果だった。

 そこで出てきたのが「1円領収書」である。政治資金規正法が天下のザル法であることはこの20年間の議員スキャンダルと国会の空論をみればわかるが、5万円以上を1円以上にしようという自民党のもくろみは、作ったばかりの改正規正法もやっぱりザルだったということを、自民党が証明したことにほかならない。

 しかも、政治家はしたたかだ。政治家の論理に世間の常識は通じない。

 党改革実行本部の石原伸晃本部長(幹事長代理)が行った各派からの意見聴取では「政治資金の性格上領収書を取れないものもある」「事務量が増えるだけで法の理念にそぐわない」などと反対意見が続出。

 個々の議員からは「祝いや香典に領収書は取れない」「自動販売機のジュースはどうなるのか」といった声もあるというから笑えない。

 そもそも政治資金で祝意や弔意をあらわす発想が国民の感覚から乖離している。領収書がもらえないなら支出しなければいいし、仮に相手がいる支出だとしてもジュースや弁当代を会社に請求するサラリーマンなんて聞いたことがない。杉村太蔵議員も自身のブログで「そんなもの自腹で払え」と書いているように、一見子供じみた反論といえる。

 が、政治家の本音はすでに別のところにある。


 国会議員が本当に隠したいのは香典の相手先だけでは決してない。たとえば地方議員や支援者らへの接待費、自らの遊興費といった彼らが絶対に口に出して言えない、ケタはずれの裏のカネ、あるいは本当にヤバいと自覚しているカネなのである。5万円以上なら面倒だけど抜け道がないこともないが、1円以上ならそれこそ自腹を切らされるのではないか-。必死の反論の裏には、政治家の切実な思いが隠されているのである。

 自民党の改革論議に対し、民主党も1円領収書に同調する姿勢で、秋の臨時国会に改正案を提出する方針という。

 参院選大勝を追い風に、国会運営でも攻勢に出たい民主党としては、自民党との違いを見せるために政治資金規正法への姿勢を明確にしたいところだろうが、執行部の思いや勢いに違いはあっても、個々の議員の本音は自民と同じ。本気で改正してやろうという議員が与野党でどれだけいるか、おおいに疑問と言わざるを得ない。

 「1円領収書」は迷走し、いずれ逆走して消えてしまうのである。(夕刊編集長 今村義明)
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by deracine69 | 2007-08-11 16:08 | 政治  

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