日印首脳会談 核問題で腰が引けては

8月24日 信濃毎日新聞

 安倍晋三首相がインドを訪問し、シン首相と会談した。議題の一つが、インドが米国と進めている原子力協力の問題である。安倍首相は唯一の被爆国のリーダーとして、核廃絶に向けた強いメッセージを送ることができなかった。

 「主張する外交」を掲げる安倍首相である。その割に、踏み込み不足の感が否めない。

 両首脳の行き来は、昨年12月にシン首相が来日して以来になる。トップ同士の交流を通じ、アジアのパートナーとして両国が連携を深めることは重要としても、肝心の場面で日本が姿勢を明らかにできないようでは心もとない。

 インドは、国際社会の核不拡散の取り組みに冷淡だ。核拡散防止条約(NPT)に加盟しようとしない。包括的核実験禁止条約(CTBT)にも背を向けている。

 これにお墨付きを与えようとしているのが米国である。以前はインドを激しく非難したものの、2005年に核協力を進める方針に転じた。エネルギー需要が高まるインドの原子力市場を狙ってのことだ。

 インドに対する米国の譲歩の姿勢は際立つ。核兵器開発に転用できる技術移転の可能性にも道を開いた。

 平和利用を隠れみのに、インドの核開発計画を支援しようとしている。専門家はそう批判する。

 インドへの核燃料輸出が始まれば、核兵器にも使える余剰ウランが増大するおそれが高い。インドの核開発がここで例外扱いされれば、NPTは骨抜きになる。

 インドは1974年に初の核実験に踏み切り、核開発を進めてきた。地理的に核保有国のロシアや中国に近い。核開発を進める隣国パキスタンとは敵対関係にある。アジアの核問題は深刻さを増す。

 インドは米国との原子力協力について、日本に明確な支持を求めていた。安倍首相は支持表明を見送るのがやっとだった。インドの核開発を既成事実として容認したのでは、核廃絶の目標はさらに遠ざかる。日本政府は今後、インドの核をめぐって難しい対応を迫られる。

 両首脳は会談の中で、京都議定書に代わる地球温暖化対策について、新たな国際的枠組みに参加することで一致した。インドは温室効果ガスの排出量で世界5位ながら、いまは削減義務を負っていない。十分ではないにしろ、インドの参加表明は一定の成果である。

 インドは経済などの各面で存在感を高めるだろう。2国間協力を進めつつ、核開発をどう抑制していくか、日本外交の構想力が試される。
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by deracine69 | 2007-08-24 08:00 | 政治  

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