安倍首相辞任 政治混迷の回避急務

9月13日8時3分配信 産経新聞

 奇をてらわないサプライズ(驚き)のない政治が身上の安倍晋三首相が、最後の最後でサプライズをみせてくれた。

 むろん、褒めているのではない。新党日本の田中康夫代表がコメントしたように、政治空白と国会の混乱を生み出す「自爆テロ」としか言いようがない。

 首相が任期中に突然、辞意を表明することは、さほど珍しくない。最近では平成8年に村山富市首相が「元旦の青空を見て」退陣を決意した例もある。だが、国会の本会議で当面の政治方針を示す所信表明演説をし、さあ、これから代表質問という直前に職を投げ出した首相は寡聞にして知らない。与謝野馨官房長官は、健康状態を辞任の理由として挙げたが、それならば、演説前に決断するべきだった。

 首相は、民主党の小沢一郎代表に党首会談を拒否されたことを辞任の理由として真っ先に挙げたが、これもみっともない。臨時国会は始まったばかりであり、しつこく会談を呼びかけ続ければ世論の風向きも変わり、小沢氏も折れざるを得なかったはずだ。

 短かった安倍政権を振り返れば、昨年秋に靖国神社参拝を封印してまで電撃的に実現させた中国、韓国訪問の直後が政権のピークだったのかもしれない。ただ、春秋の筆法をもってすれば、内外の反対を押し切って靖国参拝を続けた小泉純一郎氏は5年間政権を維持し、参拝できなかった安倍首相は1年も持たなかったことになる。

 政治的死者にこれ以上鞭打っても何も得るものはない。問題はこれからだ。

 自民党にとっては、まさに正念場だ。

 海上自衛隊のインド洋での補給活動の継続や年金問題、さらには都市と地方の格差など重要な政治課題が山積している。約1カ月かかる党員も参加した正規の総裁選をやっているヒマはない。すみやかに新総裁を選び、政治の混迷を一刻も早く断つべきだろう。

 懸念材料は、小泉改革路線を継承した安倍政権が挫折した結果、またぞろ「古い自民党」の体質が復活しかねないことだ。派閥の有力者による談合で事実上、新総裁が決まるようでは、国民の失望は増すばかりだ。短期間ではあっても、候補者が公開の場で政策や信条をぶつけて総裁選を公明正大に戦うことが党再生の一歩となる。

 メディアの側も反省すべき点がある。

 「政治とカネ」の問題を追及するのは当然としても、小さなミスまで「魔女狩り」のようにあげつらうのは政治家の萎縮を招きはしないか。

 それにしても突然の首相の政権投げ出しには暗澹とせざるを得ない。政治家の劣化は、裏を返せば日本社会の劣化であることを有権者も真剣に考えるべきときにきているのではないか。(政治部長 乾正人)
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by deracine69 | 2007-09-13 08:03 | 政治  

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