首相所信表明 反省をいうのは簡単だ

9月11日 北海道新聞 社説

 冒頭から「深い反省」である。ではいったい、何を反省するのか。

 安倍晋三首相の所信表明演説を聞いても、それがさっぱり分からない。

 参院選の惨敗は「国民の思いや怒りに十分応えきれていなかったこと、政治と行政に不信を招いたこと」が原因だという。

 しかし、国民は何に怒り、なぜ不信を募らせたのか、という肝心な点への言及がない。これで「反省」といわれても真に受けるわけにはいかない。

 格差を広げた改革路線。相次いで噴き出した政治とカネの問題と、首相の対応の鈍さ・まずさ。「消えた年金」に象徴される役所仕事のずさんさ。反省すべきことは山ほどあるはずだ。

 首相は「『退陣すべきだ』との意見があることは承知している」とも述べた。それにもかかわらず、続投を決意したのは「戦後レジーム(体制)からの脱却」という「改革を止めてはならない」との一心からだそうだ。

 ちょっと待ってもらいたい。

 参院選で示された民意は、憲法を頂点とした戦後体制を否定する安倍政治への反発でもあった。

 そこに気付かないのなら鈍感だし、分かっていながら無視するのなら傲慢(ごうまん)で不誠実な態度というしかない。

 首相は訪問先のシドニーで、対テロ戦争を後方支援する自衛隊の海上給油活動継続のために「職を賭する」と言明した。

 所信表明ではこの言葉を使わなかったが、いままさに職を賭して取り組まなければならないのは目の前に山積する内政問題ではないのか。

 給油活動継続については与謝野馨官房長官が気になる発言をしている。

 与野党勢力の逆転した参院で否決されても、衆院で再議決することは「おおげさに考える必要はない」「普通のこと」だというのだ。

 前国会で批判を浴びた力ずくの政治手法への反省がうかがえない。首相が所信表明で述べた「国民のために闘う覚悟」とはそういうことなのか。

 もう一つ、この演説で注目していたのは「安倍カラー」の濃淡だった。

 これまでの所信表明や施政方針演説で乱発した「美しい国」は今回、最後の方で一回登場しただけだ。改憲についても「議論を期待する」という表現にとどめている。

 「美しい国」が減ったのは自省の反映かと思ったら、すでに十分説明してきたからということらしい。だが、それは独り善がりというものだ。参院選の結果は「美しい国づくり」への拒否反応と受け止めなければならない。

 首相の「反省」はどこまで本物なのか。タカ派的、国家主義的な政治路線は軌道修正されるのか。通り一遍の所信表明だけでは判断できない。この国会は国民がそれを見極める場だ。
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by deracine69 | 2007-09-11 23:59 | 政治  

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