祖父譲り 安保譲らず 安倍首相

2007/09/11 10:26 産経新聞

 安倍晋三首相は9日、外遊先のシドニーでテロ対策特別措置法の延長に「職を賭していく」と述べ、自ら退路を断った。10日召集の臨時国会は衝撃の幕開けとなり、野党は「政権交代に向けた戦時体制国会だ」(山岡賢次民主党国対委員長)と対決色を鮮明にさせた。首相は衆参の与野党勢力が逆転した「ねじれ国会」をどう動かそうとしているのか。そして首相発言の真意はどこにあるのか-。

 9日の内外記者会見での首相発言は、官邸スタッフにも「寝耳に水」だった。発言に驚いた司会役の長谷川栄一内閣広報官が「それでは次に…」と遮ったが、首相は「私は職責にしがみつくことはない」と言葉を続けた。首相秘書官らは「狙いすました発言だったのか…」と顔を見合わせたという。

 首相はシドニー到着直後から発言のタイミングを狙っていた節がある。

 8日朝の日米豪3カ国の首脳・外相朝食会。首相は日米豪の関係強化の重要性やテロ対策の意義を切々と説き、ほぼ「独演会」にしてしまった。安倍政権が崩壊すると国際社会にどれほど影響を与えるかを米豪首脳に印象づけることが狙いだったようだ。

 午後の同行記者団との内政懇で海上自衛隊のインド洋での活動を「対米というより対外公約だ」と踏み込んだのも、内外記者会見を前にマスコミや与野党の反応を瀬踏みすることが目的だったという。

 首相がここまでテロ特措法の延長にこだわるのは、テロ対策活動が日米同盟の真価を問うだけでなく、中東-日本間のシーレーン確保は日本経済の生命線だと考えているからだ。首相は参院選直前にも「安全保障は絶対に政争の具にさせない。野党がそれを仕掛けるならば妥協せず正面から受け止める。それができないならば政権を担う意味がない」と周囲に言い切ったという。

 内閣改造後、首相は執務室にこもりがちとなり、遠藤武彦前農水相の辞任騒ぎや他の閣僚の不祥事対応は与謝野馨官房長官らに任せっきりだった。「もはや政権を維持する気力がなえたのでは…」との声も出たが、実際は誰とも相談せず、「テロ特措法をどうするか」の一点に知恵を絞っていたのだ。

 首相発言を受け、与党内には「自ら政局を招くようなものだ」(公明党幹部)などの不満も渦巻く。だが、中川昭一前政調会長は「やはり首相は故岸信介元首相の血を引いているな」と納得の表情。麻生太郎幹事長も「岸氏の孫らしいよい判断だ。これで小沢氏もしんどいだろう」と周囲に漏らした。

 岸氏は晩年の「岸信介証言録」(毎日新聞社)でも「首相が最重視するのはいうまでもなく安全保障だ」「国益に身を挺(てい)して守る能力がなければ、いくら善人でも首相としてはダメだ」と断じている。その薫陶を受けた首相が、民主党に「政権を奪いたいなら安全保障を正面から論ぜよ」と突きつけたのは、当然の帰結だというわけだ。

 10日の衆院本会議での首相の所信表明演説。激しいヤジが飛び交う中、小泉純一郎前首相は最後列で眠るように聞いていたが、「テロとの戦い」のくだりにさしかかるとふと頭を上げ、何度も首を縦に振った。「その姿勢でいいんだ」というサインだったのだろうか。(石橋文登)
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by deracine69 | 2007-09-11 10:26 | 政治  

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