安倍演説 言葉が軽すぎないか

2007年9月11日 中日新聞 社説

 臨時国会が開幕し、安倍晋三首相が所信を表明した。テロ特措法延長へ自らの退路を断ったはずにしては、代わり映えせず、国民は肩すかしを食らった格好だ。一国の首相として言葉が軽すぎないか。

 安倍首相は週末、シドニーで大いに語った。ブッシュ米大統領との会談で、インド洋上での海上自衛隊の給油活動継続に全力を挙げる決意を表明した。十一月一日に期限切れとなるテロ対策特別措置法の延長に「職を賭して取り組む」とも記者団に明言した。

 退陣も辞さない決意を示すことで、延長反対の野党や世論の協力を得たい。こんな計算もあるのかもしれないが、シドニーから帰国直後、首相を待ち受けていたのは、参院での与野党逆転の厳しい現実だった。

 参院本会議場で演説に立った首相を、野党議員の冷たい視線が容赦なく突き刺す。その雰囲気にのまれてか、原稿を一部読み飛ばす場面もあった。内容も期待はずれだった。

 特措法問題では、海外であれだけ大見えを切ったにもかかわらず、国内では「ここで撤退し、国際社会における責任を放棄して、本当にいいのでしょうか」と、継続に理解を求めた程度。わずか一分だ。

 自ら国際公約し、退路を断つ考えを示す以上は、その真意を国民に十分説明すべきである。帰国後に演説原稿を直す時間もあったはずだ。積極的に語ろうとしない姿勢は国会軽視のそしりを免れまい。

 首相は演説冒頭で、自らの政権運営を深く反省した。その上で「改革を止めてはならないとの一心で続投を決意した」と語ったが、年金、格差、教育、政治とカネなどの課題については、新味のない項目の羅列だった。反省を生かすならば、選挙の民意を踏まえ、従来の路線の修正点を具体的に示し、政策に優先順位をつけるべきではなかったか。

 私たちはバッシングを受けながらも、なお政権にとどまる理由を知りたかった。しかし、納得できる答えはなかった。そもそも、続投を宣言しながら、テロ特措法が延長できなければ退陣するとの発言は整合性を欠き、理解に苦しむ。少し混乱しているのではないか。首相としての資質にかかわる問題ともいえる。

 今国会は、首相の進退とともに、政治とカネをめぐる鴨下一郎環境相らの問題もある。参院での問責決議案の提出が焦点の一つとなろう。

 ただ、その攻防の一方で、国政調査権などを駆使した深みのある議論を与野党に期待したい。そうでないと、せっかくの「逆転国会」もドタバタ劇になってしまう。
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by deracine69 | 2007-09-11 23:59 | 政治  

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