「クーデター」に失敗 福田の後塵を拝した麻生

2007年09月14日 11:03 データ・マックス
正成の政界インサイドレポート

■ 「花道」を断たれた安倍

「これは麻生と与謝野の宮廷クーデターだ!」

 安部首相の退陣表明の日、最後までつき従った唯一の側近はそう叫んだ。

 外遊先のシドニーで「テロ特措法成立に職を賭す」と決意表明した安部首相だったが、帰国すると、国会情勢は極度に悪化し、首相が望んだ小沢一郎・民主党代表との党首会談もセットされていなかった。政権を支えているはずだった麻生太郎・自民党幹事長と与謝野馨・官房長官は政権に見切りをつけて何もしていなかったのだ。

 安倍首相は愕然とした。だが、官邸にはすでに相談できる側近もいない。「お友達人事」と批判された親友の塩崎恭久・前官房長官や下村博文・前官房副長官らは内閣改造で官邸を去っていた。

「やはり人事を任せたのがいけなかったのかな」

 首相を励まそうと官邸を訪れた町村派幹部に力なくそう漏らした。改造人事を麻生氏と与謝野氏に委ねたことが孤立を招いたという愚痴だった。

「総理が職を賭すと言ったのは、党首会談で小沢氏に特措法延長後の辞任を約束し、自分のクビを差し出すことで民主党の賛成を取り付ける覚悟だった。インド洋での自衛隊の給油活動継続を花道に退陣するというせめてもの望みも絶たれた」(安倍側近)

 安倍首相は9月10日の所信表明演説を終えると、夕方の自民党役員会のあと、麻生氏にひそかに辞意を伝えた。

■ 「安倍の口を封じろ」

 その夜、麻生氏は派閥の側近議員たちと”祝杯”をあげた。

「次はいよいよ麻生政権だ」

 そうした声があがった。

「麻生さんは安倍退陣表明の前にできるだけ総裁選の準備を進め、短期決戦で一気に麻生後継の流れをつくる戦略を描いた」(麻生派議員)

 だが、麻生氏もまさか9月12日の代表質問直前に安倍首相が”登校拒否”になるとまでは予想していなかったようだ。緊張の糸が切れた安倍首相はもたなくなっていた。

 短期決戦──。

 麻生氏は時間を置くと、党内に福田康夫・元官房長官擁立の動きが出てくることを警戒した。

「麻生緊急避難内閣」をつくるには、福田擁立談合がまとまる前に勝負をつけなければならない。

 そこで安倍退陣表明の混乱のなか、総裁選日程を「9月14日告示、19日投票」で押し切ろうとした。

 もうひとつの懸念もあった。安倍首相の周辺から、「総理が麻生と与謝野に騙されたと後悔している」という情報が漏れ始めたことだ。

 本コラムの前回 で書いたように、内閣改造後の安倍政権は麻生氏と与謝野氏がすべてを仕切り、事実上、安倍首相を傀儡化していたことは間違いない。

 万が一、気の弱った安倍首相が麻生批判らしい言葉を公の場で漏らしたら、その瞬間、麻生政権は夢と終わる。

 退陣会見翌日の9月13日、安倍首相は予定していた自民党両院議員総会をドタキャンして慶応病院に入院した。

 本人は「党のみんなに退陣の理由をキチンと説明したい」と言っていたが、麻生氏と与謝野氏が「体調の悪化」を理由に病院送りにしたというのが真相だ。

■ 麻生の誤算

 自民党内は突然の安倍退陣表明にショック状態となり、一瞬、「麻生後継しかない」というムードになりかけた。

 ところが、麻生氏が記者団に不用意に漏らしたひとことで流れが一変する。

「2日前の役員会のあと、総理に辞意を打ち明けられた」

 麻生氏だけが事前に知らされていたことがわかると、党内に麻生不信が急速に高まった。
「なぜ、幹事長は隠していたのか。麻生だけは後継者にできない」

 とくに安倍首相の出身派閥の町村派内の怒りはすさまじかった。

「総裁選日程を執行部の勝手で決めるな」

 12日の自民党総務会では町村派を先頭に、津島派、山崎派、古賀派らの各派からそう批判があがり、両院議員総会で麻生執行部の「19日投票」案は押し戻され、「9月23日」に決まった。

 麻生氏のシナリオは徐々に狂い出した。

 最大の誤算は、福田氏支持派が異例のスピードで結束したことだろう。

 外遊先のパリで安倍退陣を聞いた森喜朗・元首相は緊急帰国し、電光石火で「福田擁立」をまとめあげた。

 流れを決したのが小泉純一郎・前首相の巧妙な動きである。安倍退陣とみるや、小泉氏の腹心、飯島勲・前総理秘書官は「50人集めたらオレが小泉出馬を説得する」と号令をかけ、その日のうちに小泉再登板を期待する小池百合子氏や小泉チルドレン31人を結集した。

 知恵者の中川秀直・前幹事長も加わった。

 そのうえで小泉氏は「福田支持」を宣言したのだ。だまし討ちに近い「ミニ小泉劇場」だったが、彼らの立場として、庇護者の小泉氏に従うしかない。

「総裁選の最大の浮動票は麻生にも福田にも反感を持つ81人の小泉チルドレンだ。たとえ独自候補を立てたところで、決戦投票では麻生か、福田かの究極の選択を迫られる。小泉はその中核を福田支持でまとめ、福田政権への流れを確実にした」(町村派幹部)

 まさに森─小泉─福田といった町村派中枢の結束によって、「プリンス安倍」に弓をひいた麻生氏は事実上、討ち取られたのである。

 泰山鳴動。結局、この派閥の政権たらいまわしで、福田政権という元の「古い自民党」に戻るのか──。
[PR]

by deracine69 | 2007-09-14 11:03 | 政治  

<< 純ちゃん「100%出ない」断言... 松屋の「豚めし」 全店で「デン... >>