連載「海図なき政権」<上> 自画自賛 危うさに目をつぶり

2007年09月24日11時12分 西日本新聞

 新リーダーを選んだ自民党の国会議員たちを待ち受けていたのは「麻生コール」だった。23日午後、東京・永田町の党本部前。麻生太郎幹事長を応援しようと集まった若者ら約300人の絶叫は約3時間、途切れることなく続いた。

 福田康夫元官房長官が大勝した総裁選だが、35都道府県で実施された党員投票の得票数でみると、麻生氏が福田氏を上回った。「麻生さんの大衆人気を証明した」。麻生氏を支持した若手議員は言い切った。

 「福田さんが勝ちすぎないで逆によかった」。福田氏を支持した議員たちは軽く受け流した。福田氏は記者会見で「自民党は結構バランス感覚があるんですよ」と微笑を浮かべた。

 福田氏に投票したベテラン議員は「民意」を読み解けないでいた。鳴りやまない「麻生コール」に不思議そうにつぶやいた。「これが『アキバ系』の人たちなんだね」

 ■若手の支持も

 「若い人たちの声はどうかな」。安倍晋三首相が突然の退陣表明をした12日夜、福田氏は決起を促す側近議員にこう漏らした。若手議員の支持に不安を覚えていた。

 懸念はすぐに消えた。「小泉チルドレン」と呼ばれる新人衆院議員らのグループは、幹事長として郵政造反組の復党に動いた麻生氏に反発。小泉純一郎前首相が出馬を完全否定すると、片山さつき衆院議員らが「小泉改革の継承者」と支持を表明した。

 一方、派閥領袖らは「劇場型政治からの転換」「安心感のある政治」「人の意見を聞くバランス感覚」を期待して雪崩を打った。トップダウン型から融和型のリーダーに替え、主導権を取り戻そうと結束した。

 ベテランと若手。それぞれの思惑が「福田支持」に集約された。党内基盤は盤石のはずだった。

 ■「何も語れない」

 ところが、総裁選に入ると福田氏の準備不足が露呈した。討論会や演説会では精彩を欠き、アピール度で麻生氏に見劣りした。

 「官房長官時代は輝いていたが、今は何も語れない。麻生さんより明らかに劣っている」。町村派のベテランも認めざるを得なかった。周辺がテレビ出演のキャンセルに動いたこともあった。

 投票日が迫る中、党内に福田氏の手腕への不安が芽生え始めた。新人議員は「福田さんには安定感がある。ただ、衆院選を戦えるのか。党の顔としては明らかに麻生さんだろう」と悩ましさを明かした。

 守りの福田、攻めの麻生|。ベテラン議員は政治の不信と空白を生んだ党の危機に「守り」の選択をした正しさを強調した。

 「党内も荒廃している。こういうときだから、温厚な『癒やし系』の人がいいんだ」

 危うさに目をつぶったかのような「安全策」。政権安定の転機になるのか、政権転落への序章なのか、若手もベテランも読み切れない。

   ◇   ◇

 「ポスト安倍」を担う自民党新総裁に福田康夫氏が選ばれた。だが、参院の与野党勢力が逆転した中、その明確な針路は見えていない。難航必至の政治を展望する。
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by deracine69 | 2007-09-24 11:12 | 政治  

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