「反米」と見られ日本を孤立させた安倍晋三

日高義樹(ハドソン研究所首席研究員)
2007年10月3日 リベラルタイム

 安倍晋三首相が失脚した。内閣を改造して「重厚内閣」等と自賛していたが、しょせんは派閥代表の内閣に過ぎず、国際的にもただの化粧直しと見られていた。世界中の人々は、参議院選挙の直後から「安倍政権はレイムダック化した」という厳しい評価をしていたのである。このため世界各国の投資家たちが日本への投資を手控え始めたのだ。

「日本に投資するのは危険だ。日本経済はデフレ傾向にある。拡大は見込めない」。ニューヨークのファンド・マネージャーはこういっている。日本企業に対する投資も今年初めから減っている。こうした趨勢について全てを安倍前首相の失策のせいにするのは酷であるが、小泉純一郎政権のあと安倍政権のもとで日本は孤立し、冷遇され続けてきた。外国投資家たちは、はるか海の彼方から日本を眺めている。日本のことを詳しく知っているわけではないから、見たこともない企業に投資する時には誰でも用心深くなる。小泉政権の時に日本に投資した世界中の人々は、小泉首相とブッシュ米大統領の関係が日本を安全にすると考えて投資したのである。

 ところが安倍首相とアメリカの関係は全くうまくいっていなかった。安倍政権は発足当時からブッシュ政権と良好な関係を構築することができなかった。安倍首相は首相就任後、歴代日本首相の先例を無視して、同盟国アメリカよりも先に中国を訪問した。おまけに政権の閣僚たちは後先も考えずに、アメリカを批判する発言を続けた。「安倍政権は反米だ」。麻生太郎氏がイラク戦争を批判した後、ペンタゴンやホワイトハウスでこういった声が一斉にあがった。国家の外交の最高責任者である外務大臣が、同盟国の戦っている戦争を批判したのだから当然の反応だった。「ミスター・アソウが自民党の幹事長になったということは、自民党が反米ということか」。今回、日本に来る時にワシントンから乗った全日空の飛行機の中で、顔見知りのホワイトハウスのスタッフもこういっていた。ワシントンでは安倍改造内閣の防衛大臣が、ワシントンで「ズブの素人」という評判だった女性防衛大臣以上に、外交や安全保障問題を知らないことにも驚いていた。とにかく安倍政権の評判はワシントンでは最初から最後までよくなかった。汚職政治家だらけの腐敗した政権だといわれた。むろんワシントンにも汚職政治家や汚職官僚が大勢いるが、安倍政権のように汚職政治家がそのまま居座るチャンスは全くない。民主主義国家のアメリカでは「民意」が全てに優先する。参議院選挙で敗れた安倍首相の政権は瞬時にレイムダック政権になったのだ。自衛隊の海上給油が問題になった時、ジャーナリストの友人はこういった。「安倍首相がたとえ海上給油を続けられたとしてもホワイトハウスやペンタゴンは、日本の次の首相は誰かということを考え続ける」。安倍首相はその短い任期の間に日本を孤立させ、世界第二の経済大国の存在を危うくしてしまったのである。このままの状態が続けば、日本は経済的にだけでなく政治的にも完全に孤立する。アメリカは今年中にも北朝鮮と事実上の国交樹立となるかもしれないのだ。そうなれば日本は中国、北朝鮮、韓国に包囲されることになる。しかも同盟国アメリカの大勢の人々には「日本は反米だ」と受け取られているのである。自衛隊の海上給油を続けたところで事態は何一つよくはならないのだ。誰が首相になろうと、日本を滅ぼすのはアメリカのサブプライム・ショックではなく、日本の政治の貧困であることに気がつくべきだ。

 リベラルタイム11月号「THE POWER OF U.S.A」
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by deracine69 | 2007-10-03 12:00 | 政治  

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