“劇場型閣僚”舛添氏、問われる真価

11月10日21時45分配信 産経新聞

 舛添要一厚生労働相就任から2カ月半が経過した。年金、薬害肝炎など次々に降りかかる難題に、わかりやすい言葉遣いと派手なパフォーマンスで立ち向かう姿に国民は喝采(かっさい)し、「次期首相候補」の声もかかるほどの人気を得ている。メディアのニーズにも合致し、テレビなどにもほぼ連日登場している。ただ、最近は「発言が行き過ぎ」「実行は伴っているのか」との声も聞かれ始めた。滑り出し好調な“劇場型閣僚”だが、政治家としての真価が問われる時期に入ってきた。

 ■「平易に過激に」 国民つかむ

 舛添流の極意は、言葉のわかりやすさとインパクトだ。「横領した連中はきちんと牢屋に入ってもらう」。年金横領・着服問題では、国民にわかりやすく、かつ刺激的なフレーズを並べた。
 そのスタイルは8月27日、安倍前内閣の厚労相に就任した直後から表れた。

 30日に厚労省の前九州厚生局長が親類の社会福祉法人前理事長から高級車や現金を受け取っていた事実が発覚した際、「法律に基づき厳正に対処する」と即座に責任追及を表明。前局長はすでに退職しており、厚労省内では「処分は困難」との見方もあったが、給与10カ月分にあたる約1000万円を返還させた。

 薬害肝炎問題では、大阪高裁の和解勧告直後に原告団と面会した。現職大臣が訴訟中の相手と直接会うのは異例で、テレビカメラの前で「心を1つにしてまとめていきたい」と声を詰まらせた。

 ただ、こうした言動がトーンダウンすることも多い。

 「牢屋に入ってもらう」と明言した自治体職員による年金横領・着服の刑事告発では、後に「時効の壁で無理。私は憤慨しているが、法を犯してまではできない」。

 「平成22年1月に年金機構ができるときには、データの完璧(かんぺき)を期したい」とした年金記録紛失問題。国会で民主党・長妻昭衆院議員に「公約として明言していただきたい」と迫られると、「そういう決意で取り組むということだ」と尻すぼみとなった。

 先の薬害肝炎問題の原告団との「涙の面会」のあとも、報道陣が加わらなかった意見交換の場で舛添氏から謝罪の言葉はなく、原告団からは不満の声も漏れた。

 歯にきぬ着せぬ発言が思わぬ軋轢(あつれき)も生むこともある。年金横領・着服問題をめぐり、「銀行は信用できるが、社保庁は信用できない。市町村はもっと信用できない」と発言したことに各地の市長らが反発し、抗議文を提出する騒ぎとなった。

 ところが、舛添氏は、さらに「小人のざれ言」「バカ市長」と切って捨てたため、国会で批判され、結局は陳謝した。

 政局をめぐる“脱線発言”もある。故橋本龍太郎元首相をしのぶ会で「早ければ年内にも解散・総選挙があるのでは」と言及。町村信孝官房長官から「首相以外が解散に触れるのは不適切」と注意を受けた。

 与党内の評価は「無責任に発言しすぎだが、舛添氏の活躍で内閣支持率がもっている面もある」(自民党中堅)と複雑だ。安倍晋三前首相の退陣表明直後、若手国会議員ら二十数人と政策研究会「安心と希望」を発足させたことで「事実上の舛添派では」と警戒する声もある。政治家としてステップアップできるかは、高まる一方の国民の期待に応えられるかにかかる。(桑原雄尚)

 ■メディアと利害一致?

 舛添氏は明らかにメディアによる情報発信を重視しているようだ。

 「肝炎対策に1000億~2000億円」「年金保険料の横領職員を今からでも刑事告発する」といった勇ましい発言は会見など報道陣を前にしてのものだ。いずれも。新聞、テレビで「舛添厚労大臣は…」との書き出しで、大きく報じられた。

 特に熱心なのがテレビ出演。厚労省が把握するだけで、就任の8月27日からのテレビ出演は20回を超えた。前任の柳沢伯夫氏が1回、その前の川崎二郎氏2回、尾辻秀久氏3回で、舛添氏が突出している。

 薬害C型肝炎訴訟で、大阪高裁の和解勧告が出た11月7日夜から翌日早朝にかけて、フジテレビなど民放各局にはしご出演。「全面的に解決したい」などと早期決着に向け意気込みを語った。放送中は絶えずカメラ目線。国民に直接訴えることを意識しているようだ。

 舛添事務所によると、新聞、雑誌といった活字メディアを含めると9月だけで、50件を超える出演依頼があった。

 ある民放記者は「視聴者受けする過激な発言も多く大臣が登場する場面は視聴率が上がる」という。また、「重要な情報が発信される回数が多く絶えずマークせざるをえない存在」(別の民放記者)なのも事実だ。 

 実際、週末の地方講演などで重要情報を発するケースも多い。10月8日には京都市内で年金閣僚会議の設置を表明。続く13日は秋田市内で、海外の新薬の国内承認期間の大幅短縮を打ち出した。11月2日の横浜の講演では「11月いっぱいにC型肝炎問題を片づけるつもりだ」と表明した。

 「政治家は必要な時にはメディアを通じて国民に情報を知らせる義務がある」という舛添氏の持論を実践している。

 また、政治家になる前から“テレビ文化人”として知名度があり、自ら「テレビのプロ」というだけあって、出演するテレビ番組は「大臣の判断で決めている」(事務所)。舛添氏は「ケース・バイ・ケースだが、テレビ局の都合では編集されない生放送を重視する。国会で討議できることはテレビではやらない」と語る。

 こうしたメディア戦略について、明治大学政治経済学部の竹下俊郎教授(政治コミュニケーション論)は「自らの基盤は人気と知名度で、政策を進めるためには世論の風に頼らざるをえないことを理解しているからではないか」とみる。

 また、法政大学社会学部の稲増龍夫教授(メディア論)は「『やるぞ』という姿勢は国民に伝わる。宣言通りにいかなくても『役人がひどかった』と思われるだけ。世論からは好意的に見てもらえるかもしれない」と指摘。ただ、「宣言通りにいかなければ単なる人気取りと受け止められる危険もある」と話す。勇壮な発言も最近は「やや空回り気味だ」(関係者)との冷めた見方も広がりつつあり、“舛添劇場”は両刃の剣にもなりかねない。(神庭芳久)
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by deracine69 | 2007-11-10 21:45 | 政治  

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