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医薬品成分が水道水に残留、再び人の体内に? 厚労省などが実態調査

4月16日12時56分配信 産経新聞

 体内に吸収し切れず、体外に排出された医薬品成分が、上下水処理で除去されずに水道水を通じ、再び体内に取り込まれている可能性があるとして、厚生労働省などが実態調査に乗り出している。水道水への混入は微量で健康への影響もないとされるが、米国では抗生物質や精神安定剤などの医薬品成分が検出され、問題になっている。約2800種にのぼる医薬品には分析方法が確立されていないものも多く、大阪市など大都市圏の自治体は対応に追われている。

 ■大阪市も調査

 大阪市水道局の柴島浄水場(東淀川区)。敷地内にある水質試験所では、淀川や浄水場内で採取して1000倍に濃縮した水を質量分析計に入れ、長さ数十メートルの細い管に通して物質量を量っている。

 本来は残留農薬などを調べる装置だったが、市水道局は厚労省などが実態調査を始めた3年前から、医薬品成分の濃度を独自に調べてきた。対象はカフェインや解熱鎮痛剤など42種類。いずれもオゾンによる高度浄水処理や砂濾過(ろか)など現在の手法でごく微量に抑えられることが判明したという。

 ただ、日本で流通する医薬品は約2800種にのぼり、水に溶けやすく分子構造が複雑な物質ほど測定は難しい。寺嶋勝彦研究主幹は「一物質の測定方法を確立するまでに2~3年かかり、費用もかかる」と指摘。同様の調査を行う自治体はほかにないという。

 ■4100万人

 大阪市水道局が神経をとがらせるのは、医薬品による水道水の汚染が世界的に広がり、住民の不安を払拭(ふつしよく)する必要に迫られているためだ。

 AP通信の今年3月の報道によると、全米24の大都市圏で少なくとも4100万人が利用する水道水から医薬品成分が検出された。東部フィラデルフィアの水道水からは高コレステロールやぜんそくの治療薬成分など56種が見つかり、ニューヨークの水源からは精神安定剤や心臓病治療薬の成分が含まれていたという。

 日本でも厚労省などの研究班が昨年1月に関東と関西の計7浄水場を調査。うち、3浄水場の水道水から高脂血症剤、解熱鎮痛剤、抗てんかん剤が1リットル当たり6~31ナノグラム(ナノは10億分の1)検出された。

 いずれも体重50キロの成人が水道水を毎日2リットル、70年間続けて飲んだとしても、1日で摂取できる薬の限度量にさえ満たず、健康には影響ないという。

 ■過剰な摂取

 医薬品成分が水道水から検出される背景には何があるのか。厚労省などの研究班は「主にヒトから排泄(はいせつ)されたものが下水処理場を経由して河川水や水道原水に混入。大部分は浄水処理の過程で除去されるが、一部は浄水に残留している」と結論づけた。

 平成17年の医薬品の国内向け出荷金額は約7兆5600億円にのぼり、5年間で18%増加。米国でもこの5年間で処方を必要とする医薬品の購入は12%増えた上に、処方を必要としない医薬品も減っておらず、こうした過剰な摂取が一因とAP通信は指摘している。

 欧米では製薬会社に新薬開発などの過程で環境影響評価を行うことを義務づけており、分解されやすく自然界に蓄積しにくい物質を使うよう求めているが、日本では手つかずの状態だ。

 宮田秀明・摂南大薬学部教授(環境科学)は「たとえ微量であっても、知らないうちに持続して医薬品成分を摂取していることは間違いないだろう。複数の成分が人体に及ぼす複合的な影響も評価する必要があるが、現在のところ実態が分かっておらず、今後も懸念される問題」と話している。

by deracine69 | 2008-04-16 12:56 | 社会  

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