【単刀直言】猪瀬直樹・地方分権委委員 道路移譲が分権の本丸

5月17日8時1分配信 産経新聞

 ■暫定税率分は地方税に 無駄排除しやすく

 小泉内閣がすすめた道路公団民営化は、2兆6000億円の料金収入を高速道路整備だけでなく、数多くのファミリー企業に分配していた日本道路公団などを健全経営にするのが目的だった。今後20兆円もかかると公団が言ってきた建設費を半減させ、4公団全体で40兆円あった借金を45年間で完済することにした。

 これで、無駄な高速道路の整備に歯止めがかかった。一方で国土交通省が管轄する無料の国道の世界が残り、それを解決するのに必要だったのが道路特定財源の問題だった。

 国道を整備・管理する国交省の地方整備局や関連の公益法人は、道路特定財源からマッサージチェアの購入や慰安旅行代などとやり放題に使っていた。「職員天国」だったのだ。

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 ではどうするか。国税である揮発油(ガソリン)税の暫定税率分約1兆4000億円を地方税にして、ガソリンスタンドで課税する「ガソリン引取税」にしたらどうかと提案する。

 北海道夕張市は、使途が制限される補助金に頼りハコモノばかりを造った。しかし、管理費が賄えず、財政破綻(はたん)した。地方税にしたら、地方は「自分の金で造る」わけだから、無駄を排除しようという発想が生まれ、地元にとって本当に便利な道路も造れる。

 使途を制限しなければ、道路だけでなく環境や医療などにも使える。住民にとっても、地元のガソリンスタンドを使えば自らが住む自治体に金が入るわけで、税と負担の関係もわかりやすく、透明性が高くなる。

 宮崎県の東国原英夫知事らが暫定税率の維持を主張するのは、もしそれを言わずに民主党が主張するような暫定税率廃止を言えば、国が地元に金を回さないようにし、道路が造れなくなると恐れるためだった。ガソリン引取税ができると、東国原知事もそんなことは言わなくなるはずだ。

 国道の整備や管理を地方に完全に移譲したら、地方整備局の縮小は避けられない。権限と金に合わせて整備局の職員も地方に渡す。地方も整備局との重複部分の人員を減らし、無駄はさらになくなっていく。

 地方分権で行政の無駄が排除でき、道路の改革も完結する。道路の問題を解決させることこそ地方分権の本丸なのだ。地方分権改革推進委員会の第1次勧告では、税源移譲するところまでは入れる。第2次勧告では地方整備局の大幅な縮小・地方移管にまで踏み込みたい。

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 永田町では、一般財源化の方針が決まり、財源の争奪戦が始まったと報道されている。ところが、13日閣議決定された政府の基本方針には地方分権の考えが盛りこまれなかった。放置しておくと他省庁に金を取られるだけで、地方には行かなくなる。だからこそ、このタイミングで分権委が地方代表として争奪戦への「参加証」を出さなければいけないわけだ。

 分権委としては、政府・与党の考えでもない、暫定税率廃止を主張する民主党の考えでもない、「第3の道」を追求しないといけない。それがガソリン引取税の創設である。同時に分権委はこの際、農業や河川の問題などにも積極的に切り込まないといけない。

 族議員たちは、地方分権をやられたら自らの縄張りを侵されると予感して、抵抗するだろう。小泉純一郎元首相は厚相や郵政相で官僚や族議員の抵抗を経験してきたから、官邸主導で政策を決めてきた。

 しかし、福田康夫首相は官房長官しか閣僚を経験しなかった。せいぜい内閣府しかわからず、霞が関の抱える問題を見渡せない。指導力を発揮して、国民に向きあう分権改革に切り込んでほしい。

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【プロフィル】猪瀬直樹

 いのせ・なおき 昭和21年、長野県生まれ。62年に「ミカドの肖像」で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。小泉内閣で道路関係四公団民営化推進委員会の委員を務めた。昨年6月から東京都副知事。菊池寛を主人公にした「こころの王国」が「丘を越えて」の題名で映画化され、17日から上映。
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by deracine69 | 2008-05-17 08:01 | 行政・公務員  

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