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危機管理甘く「最悪のフルコース」 船場吉兆

5月28日21時34分配信 産経新聞

 食べ残し料理の使い回しで顧客の不信感が頂点に達し、廃業に追い込まれた老舗料亭の「船場吉兆」(大阪市中央区)。食品の偽装では現場や取引先に責任を転嫁し、「一から出直す」と再出発を誓ったときも使い回しを公表せずに、ウミを出し切らないまま営業再開を強行した。一連の経営陣の対応について、危機管理に詳しい専門家は「最悪のフルコースだった」と指摘。食材から建材まで各分野で偽装が相次ぐ中、船場吉兆の廃業は企業倫理のあり方に改めて教訓を残した。

■断言したウソ

 「仕入れ担当者だけが知っていた。(偽装を知っていたのは)1人だけです」「納入業者に裏切られた」。同社の不正への対応は、「ウソ」と「隠蔽(いんぺい)」に始まった。

 物販商品に使用していた牛肉や鶏肉の産地・原材料偽装が明らかになった昨年11月、当時の湯木正徳社長(74)は自ら仕入れにかかわっていたにもかかわらず会見で、「料亭で偽装はなかったのか」と問われた際、こう言い切った。

 「ない。断言できる」

 それから、わずか10日足らずで本店や心斎橋店(1月に閉店)での料理偽装が露呈。営業休止を余儀なくされた。

■再出発後の隠蔽

 大阪府警の強制捜査を受け、マスコミの取材が過熱する中、同社は代理人弁護士を選任するまで広報窓口を一切置かず、本店は、問い合わせの電話にも無視を決め込んだ。

 苦情が集中した心斎橋店の従業員は「本店が電話に出ないから、朝から晩まで謝りっぱなし。社長はなぜ対応しないのか」と記者の前で涙を流した。

 資金繰りが悪化し、民事再生法の適用を申請した船場吉兆は1月21日、本店の営業再開を発表する。隠蔽体質からの脱却をアピールすべく、調理人らを金屏風(びようぶ)の前に整列させ、「信頼回復に向け、一丸となって再出発する」と女将の佐知子新社長(71)が宣言した。

 しかし、食べ残しの使い回しについては調理場全体の共通認識だったにもかかわらず、会見では一切、言及しなかった。

 佐知子社長は使い回し発覚後に「3月に大阪府警の事情聴取を受けたときに初めて知った」と釈明したが、本紙が4月に取材した際、代理人を通じ、「そうした事実は判明していない」と回答している。

■最悪のフルコース

 「企業が不祥事で失敗するときの、すべてのパターンに当てはまる」

 農林水産省主催の「食品産業トップセミナー」で講師を務めた国広正弁護士は、「隠蔽-責任転嫁-不祥事」の“小出し”という稚拙な対応を「最悪のフルコース」と表現する。

 危機管理の鉄則は「一度で悪いことをすべて出し切り、危機に立ち向かう姿勢を見せることに尽きる」としたうえで、「内部告発が社会に浸透した今、不正を隠し切ることはできない。危機管理は複雑なものではない。ウソが一番いけない」と指摘している。

by deracine69 | 2008-05-28 21:34 | 経済・企業  

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