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東電原発被ばく訴訟 元作業員の賠償請求棄却 骨髄腫と因果関係認めず

2008年5月24日 東京新聞

 がんの一種の多発性骨髄腫にかかったのは原子力発電所での作業中に浴びた放射線が原因として、大阪市の元建設会社社員の故長尾光明さん=死亡時(82)=が、東京電力に約四千四百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は二十三日、因果関係を認めず請求を棄却した。 

 がんになった原発の元作業員が電力会社を訴えた初の訴訟。松井英隆裁判長は「長尾さんの疾患は多発性骨髄腫と認められない」と指摘。仮に認められたとしても「放射線被ばくと疾患との因果関係は肯定できない」と判断した。

 訴訟では、病気と放射線被ばくとの因果関係が争われた。松井裁判長は「疾患は多発性骨髄腫の国際診断基準を満たさない」とした上で、「発症原因は病理学的などに解明されておらず、疫学調査でも因果関係の傾向は読み取れていない」と述べた。

 長尾さんは二〇〇四年、被ばくと多発性骨髄腫の因果関係が認められたことによる初の労災認定を受けた。長尾さん側は「労災認定で因果関係が認められた」と主張したが、松井裁判長は「(労災認定の判断材料となった)厚労省検討会の報告書は(疫学調査に関し)、因果関係の判断資料という点では説得力の非常に乏しいもの」と国の見解を否定した。

 判決によると、長尾さんは東電の孫請けの建設会社の社員として一九七七-八二年、東電福島第一原発(福島県)などで配管工事に従事。九八年、骨折などが起こりやすくなる多発性骨髄腫と診断され、〇四年一月に福島県の富岡労働基準監督署が因果関係を認めて労災と認定した。長尾さんは昨年十二月に死亡した。

『労災認定、悪影響も』

 東京電力に損害賠償を求めた故長尾光明さんの支援者らは判決後、東京都内で記者会見。弁護団長の鈴木篤弁護士は「業務起因性を認めた労災認定を、司法判断が否定した例は非常にまれだ」と強調した。長尾さんを支えてきた関西労働者安全センターの片岡明彦事務局次長は「労災認定を踏襲することに躊躇(ちゅうちょ)したとしか思えず、目に見えないものにおびえた判決と思ってしまう」と訴えた。

 労災認定されたのに、放射線被ばくと発症との因果関係を否定した司法判断について、鈴木弁護士は「今後の労災認定に何らかの影響を与える可能性はある」と述べ、労災認定の門戸が閉ざされることに懸念を示した。

 <多発性骨髄腫> 抗体をつくる「形質細胞」が骨髄で異常増殖する病気。形質細胞が腫瘍(しゅよう)化するほか、悪性タンパク質をつくり出すことから、血液がんの一種とされる。わずかな力で骨折するようになったり、腎臓機能が低下したりするのが主な症状。発症のピークは60-70歳代で、罹患(りかん)率は10万人当たり2人。根治させる治療法は見つかっていない。

by deracine69 | 2008-05-24 08:00 | 経済・企業  

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