<ドーハ・ラウンド>保護主義に懸念…世界経済に暗い影

7月30日1時31分配信 毎日新聞

 世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)は29日、9日間に及ぶ非公式閣僚会合の末、決裂という最悪の結果に終わった。これにより、年内はもちろん、米国の政権交代などで来年に入ってもしばらくは交渉再開の見通しが立たない状況だ。WTO加盟国の間では、ラウンドそのものが崩壊し保護主義的な動きが強まることを懸念する声も漏れ始めており、世界の自由貿易体制は大きな危機にさらされることになった。

 今回の閣僚会合はもともと、「年内に最終合意にこぎ着けるラストチャンス」(政府筋)として、各国の主張に大きな隔たりがある中で開催された。来年は米国の政権交代のほか、欧州議会選挙、インドの総選挙も予定され、年内に合意できなければ交渉は事実上凍結される。加盟各国は「今回合意できなければ何年も先延ばしされる」との強い危機感を持って閣僚会合に臨んだ。

 こうした中、25日にはラミー事務局長が大枠合意に向けた裁定案を提示し、交渉の流れは合意に傾きかけた。日本も一時は、農産品の一律的な関税引き下げの例外となる重要品目数について、これまでの日本の主張より厳しい裁定案を受け入れる方針を固めたほどだった。

 しかし、合意に近づくほど各国の譲れない線が明確になり、最終的には農産品の緊急輸入制限をめぐる米国と中国・インドの対立が決定的となり、決裂に追い込まれた。

 7年近くの交渉の末、おぼろげながらゴールが見えた中での決裂だけに、今回の閣僚会合は合意の難しさを改めて浮き彫りにした形で、ラウンドに与える打撃は大きい。交渉は一からの出直しを余儀なくされ、再開の道筋をつけることすら困難になりそうだ。

 新興国の台頭などでグローバル化が進展する中、自由貿易体制を堅持する必要性はこれまで以上に高まっている。特に近年は、世界的なエネルギー・資源高に伴い、保護主義の高まりもみられ始めているだけに、ドーハ・ラウンドの決裂は世界経済に暗い影を落としそうだ。【平地修】




<ドーハ・ラウンド>米と中印の対立解けず、決裂
7月30日1時29分配信 毎日新聞


 【ジュネーブ藤好陽太郎、澤田克己】世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)は29日、農産品の緊急輸入制限をめぐる米国と中国・インドの対立が解けず、決裂した。01年にカタールのドーハで始まって以来7年に及んだラウンドは、9日に及んだ今回の閣僚会合でも大枠合意に至らなかったことから、交渉再開は少なくても来年以降に先送りされる見通しだ。

 モノやサービス、知的財産権など幅広い分野に及ぶ多国間交渉の場が途絶えることで、各国が2国間や複数の特定国間で貿易の自由化を進める動きを強めるのは必至。それ以外の国に対しては保護主義的な対応を取る可能性が高く、世界の自由貿易体制が大きく後退することは避けられない。

 21日から始まった今回の閣僚会合では、米国が当初、国内補助金を150億ドルまで削減する案を提示したが各国の理解を得られずに停滞。WTOのラミー事務局長が先週末に裁定案を提示し、農業と鉱工業品分野の関税削減幅などで数字が一本化され、一時は交渉が加速するかに見えた。

 しかし、裁定案に盛り込まれた農産品に対する緊急輸入制限の発動条件が厳しかったため、途上国が態度を硬化。今週に入ってからは、発動条件を緩めたい中国・インドと厳しくしたい米国の対立が激化し、交渉は暗礁に乗り上げた。特に米国は29日午前の交渉でも、中印両国を名指しで批判。一方、インドのナート商工相は記者団に「米国は商業的な利益のため、我々は農民の生計のために交渉している」と米国の商業主義を非難していた。

 難局打開のため欧州連合(EU)のマンデルソン欧州委員が29日午後、合意に向け調停案を示したが、対立は解消しなかった。

 世界銀行は、ドーハ・ラウンドが合意に達した場合、関税や補助金の削減を含めた経済効果を30兆円と試算。途上国の開発推進にも好影響を与えるはずだったが、先進国と新興・途上国との対立でその果実を得られる機会は先送りされた。

 ▽ドーハ・ラウンド 貿易自由化のルールを決める多国間交渉をラウンドと呼び、ウルグアイ・ラウンド(94年合意)までは関税貿易一般協定(GATT)に基づいて行われていた。95年に発足した世界貿易機関(WTO)の下で01年11月にカタールのドーハで開かれた閣僚会議で始まったのが現在のラウンド。2度の決裂を経て今年末の最終合意を目指し今月21日から閣僚会合が開かれていた。

 WTOは本部をジュネーブに置き、152カ国・地域が加盟。
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by deracine69 | 2008-07-30 01:31 | 政治  

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