野党に譲って民意を問え 編集委員・星浩

2008年9月2日3時1分 朝日新聞

 1年前の安倍首相の辞任表明のリプレーを見ているかのようだ。安倍氏は自民党の若手を代表し、福田首相はベテラン・穏健派に推されたという違いはあったが、2人とも国政の難しい課題を抱えながら、あっさりと政権を放り投げてしまった。

 安倍氏は参院選で吹き荒れた年金問題や格差拡大への批判になすすべがなかった。福田氏は内閣を改造し、総合経済対策を決めた直後だが、政権浮揚とはほど遠かった。人材、政策を含め、この党の政権担当能力が衰弱していることを露呈した退陣劇である。

 次の総選挙での政権交代を狙う小沢民主党が、遮二無二福田政権への攻勢を強めているとはいえ、半世紀以上の政権運営の経験を持ち、しぶとさが身上のはずだったこの党としては、いかにもひ弱で無様な幕切れではないか。

 福田氏は記者会見で、民主党の攻勢が退陣の原因と語ったが、それは、福田氏自身も自民党も、政治の難局を切り開く地力に欠けていることを示しただけのことだ。

 福田氏は、辞任にあたって「国民のため」と強調していたが、自民党がいま、国民のためになすべきことは、自民党内の政権たらい回しではない。民主党に政権を譲り選挙管理内閣によって、衆院の解散・総選挙で民意を問うことである。国民の手に「大政奉還」して、新しい政治を築き上げる時だ。

 自民党が誕生する前の保守政治の歴史には、時の政権が行き詰まったら「憲政の常道」として、野党第1党に後を委ねる慣行が成立していた時期もある。

 国内では、年金、医療など社会保障の不備が明らかとなり、最近は物価高が追い打ちをかける。国外では北朝鮮の核問題が解けないままだ。ロシア・グルジア紛争など「新冷戦」の足音が聞こえる。日本の政治が足踏みしている余裕はない。小泉首相以来の「改革路線」をどう総括するのか、外交・安全保障の難題にどう取り組むのか。争点は山ほどある。政治は、真の再生に向けて動き出すべきである。
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by deracine69 | 2008-09-02 03:01 | 政治  

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