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勤勉有能な日本人観が中国で逆転!上海で増殖する“ダメ日本人”たち

2008年10月02日11時05分 ダイヤモンド・オンライン

「上海には今、どれだけの日本人が住んでいるの」

 NHKの土曜ドラマ「上海タイフーン」も手伝ってか、こんな質問をされることがよくある。今年9月外務省が発表した資料によれば、上海に長期滞在する日本人数(07年10月1日時点)は4万7731人。NYの4万0068人を抜いて、都市別ではついに世界一に躍り出た。

 すでに上海には、05年11月時点でバンコクを抜いて世界一のマンモス校になった上海日本人学校がある。日本語フリーペーパーの種類や露出、日本料理店の新規出店の勢いを見るだけでも、上海の日本人の密度の高さが伺える。

 上海に来れば仕事もあるし、物価も安い。何より日本国籍ならそこそこ大きな顔をして生活できる――、動機は人さまざまだが、煎じ詰めれば所詮こんなところだ。1920年代後半、上海に滞在した詩人、金子光晴は著書『どくろ杯』で「きたないことが平気になれば、物価がやすく、くらしの上でうるさい世間がないことが魅力であった」と書いているが、大正の世も平成の世も、日本人が上海に求めたものは大きく変わらない。

 だが、最近はちょっと様子が違う。「日本人」は以前のように「一目置かれる存在」ではなくなってしまった。上海市民も、以前は「優秀な日本製」=「(それを作ることができる)優秀な日本人」と評価してきたが、実は日本人が現地企業のお荷物になっているケースもある。

「もう“ダメ日本人”は上海に来ないでほしい」

 ズバッと本音を吐くのは、某日系企業に勤務する中国人社員だ。同社は最近、上海で日本人女性を採用した。中国で働く日本人は、本社企業が派遣する駐在員と、現地で求職し、採用される「現地採用」の2つがあるが、彼女は後者。しかし、中国語や英語に堪能なわけでも、営業力があるわけでもなかった。何の特技もないこの日本人を採用したのは、「ブランド企業で働きたい」という彼女の熱心さに押されたためだった。



 まもなくしてそれが誤算だったことに気づく。遅刻・欠席の常習犯。中国人社員の日本人は勤勉でまじめ、というイメージを覆しただけではなく、先の四川大地震の寄付金をめぐっては「あの人、何とかならないのか」の直訴まで出る始末だった。

「お金がないのに」としぶる彼女がひねり出したのは日本円にして100円にも及ばない金額。担当の中国人社員は目を丸くした。「たったこれだけ? 日本人の彼女が? 給料は我々以上なのに」……。

 中国の寄付金額は少なくとも給料に比例する。結婚式の祝儀も葬式の香典もそうだ。しかも、記名式とあればなおさら金額は熟慮を要する。中国の寄付のやり方がいいか悪いかは別として、彼女は「郷に入れば郷に従う」べきだった。相応額がわからなければ、総務や人事に相談するのが正解だっただろう。結果、「上海で働く日本人」にミソがついたのは言うまでもない。

 上海には日本人向けの特殊なポジションがある。学歴不問、専門能力不問、語学不問という「日本人職」だ。筆者も上海で勤務をしていた頃、人材紹介会社から3つの不問、つまり“3F”人材をたくさん紹介してもらった。これらの層は想像以上に厚く、「日本人」のみで採用が決まる上海には、常に絶え間なく半端な若者が流れ込んでいることがわかる。

「日本人職」が求められるのは、1つには「日本人担当者なら安心する」という取引先ニーズがあるためだ。「中国人担当者しかいないの?日本人寄越してよ」、そんなリクエストはしょっちゅうで、日系企業は日本語が堪能な優秀な中国人より、多少、出来が悪くても日本人を信頼する。採用する日系企業にとっては、計算高い中国人よりも、思考パターンが類似している日本人が安心だ。しかし、ビザを発給する公安当局はその履歴書が腑に落ちない。「なんであんたの会社はこんな日本人を雇うわけ?」と嫌味を言われた日系企業もある。

 一方、“ダメ日本人”を雇った結果の難題もある。

「なんで中国語も話せない日本人が8000元(約12万円)も給料をもらえるんですか」

 中国人と日本人が同居する企業ではしょっちゅうこんな議論が繰り返される。アタシの方が学歴もあるし、日本語、英語も堪能なのに……。納得できない優秀な人材はどんどん辞めていってしまう。一方、当の“ダメ日本人”は尻尾を巻いて帰国するどころか、コケむすまで中国に居座る。日本には就職先がないためだ。中国沿海部を上から下に、あるいは東南アジアを転々とする姿もある。中には帰国便の航空券代さえ捻出できない貧しい日本人もいる。

「何も考えないでとりあえず上海に行く、現地で就職してもすぐやめる、そして再び登録する。中国ではそんな循環の20代後半~30台前半の日本人が目立ちます」とある人事コンサルタントは現状を指摘する。

中国=富、日本=貧? 憧れではなくなった日本人

 2001年、中国のWTO加盟を境に日本企業が大挙して上海に進出した。当時、日本のパスポート(=日本人であること)はまだまだ有効、ソニー、松下もまだまだ中国人の憧れだった。日本製品はすごい、日本の技術はすごい、日本人はすごい――。上海人にとっても日本への留学、日本企業とのビジネスは将来の富裕を約束していた。日本人男性と結婚することも、上海人女性の未来を明るくするものだった。が、こちらも様子が違ってきた。

「今の上海人女性は日本人の男性には興味はないわね、お金ないから。私?日本人と結婚したことを後悔しているわよ」

 経済格差がある限り、こういう現象は存在するだろうと思うが、所詮、日本人は金ヅルだったのか。非常に衝撃的な発言だ。

 一方、“一部の殿方”が大好きな上海の「カラオケ」業態にも変化が。月収100万円は下らないとウワサされる日本の商社マンといえば、かつては上得意客だった。上げ膳、据え膳でもてなされたものだが、今は主客逆転。自分の月収を説明するのに1本指を立てるカラオケのママさんも1人や2人ではない。偉そうに振舞う日本人に、最近は「ふん! あんたよりもらっているのよ!」の罵倒が飛ぶこともあるそうだ。

 上海の不動産賃貸業といえば、世界各国から集まった駐在員を顧客に、そのマーケットをたちどころに膨らませた業界だが、彼ら営業の最前線は、日本人のボリュームゾーンを「ロワーミドル」と位置づける。

「日本人はなぜあんなに古臭いマンションが好きなんでしょう。今はあちこちに新しい高級マンションがあるのに、絶対、古北新区から離れようとしないんです」

 日本人村という異名を持つ古北新区は、90年代後半から外国人居住地として発展した。日本人学校への地の利や、日本人向け食材店、日本料理屋と生活の利便性から、日本人が日本人を呼ぶ形で街ができ上がったという過程を持つ、いわば上海のリトルトーキョーだ(在住者は関西以西が多いのだが)。家族で赴任する駐在員にとってはワンストップさ故に離れがたいものがあるのだが、仲介業者からすると外装、内装ともに老朽化(こちらは短期のうちに老朽化してしまう)するマンションに日本人がこだわりを示す理由が解せない。

「中国人のお母さんは自分がきれいにしていることに誇りを持っているのに、日本人はなぜ、あんなふうに髪を振り乱して忙しそうにしているの」と率直に疑問を投げる同世代の中国人女性もいる。「1人っ子政策」下の彼女たちにとって、2人以上を育てる苦労はわからない。ましてや「ギンギラの上海」では、老朽化マンションでもよしとする、日本人の質素倹約の精神が妙にケチ臭く映ってしまうのである。

中国語も話せず閉鎖的 上海で日本人は浮いた存在

 上海の外資系企業に勤務する駐在員は、日系企業と取引きを辞めた理由をこう説明する。

「弊社との打ち合わせに、通訳連れで来るのは日本人だけですよ。幹部すら日本語オンリー。最初は日系大手と仕事をしたいと思っていましたが、面倒くさいので辞めました」

 国際資本の集まる上海では中国語と英語がビジネスにおける共通言語。だが、上海の日系企業においては、日本企業と日本企業の取引きが常態化していることから、いまだその必要性は生じない。仕事が終わっても日本人同士。居酒屋で同郷を集めて騒ぐ日本人は、傍目にも奇妙だ。前出の駐在員も、日本人はすでに孤立していることに気づいているのだろうかと疑問を投げる。

 上海は雇用を創出できなかった日本経済の調整弁だった。だが、力をつけた上海はそろそろ拒絶を始めた。経済力をつけた上海市民からすれば、日本人の生活スタイルが色あせたものに見え、また、国際社会の縮図においてはその行動様式も奇怪に受け止められる。すっかり浮いてしまった日本人、上海における孤立が示唆するものは決して小さくはない。

by deracine69 | 2008-10-02 11:05 | アジア・大洋州  

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