大阪駅通り魔…被害妄想の女の勝手な言い分

10月18日19時6分配信 産経新聞

 日曜日の昼下がり、混雑したターミナル駅で電車に乗ろうと歩いている複数の女性を、突然腕の痛みが襲う。切られた腕から流れる血を見たときの驚き。犯人がどこにいるか分からない恐怖ははかりしれない。

 大阪市北区のJR大阪駅構内で今年6月、女性2人をカミソリで切りつけるなどしたとして傷害と暴行の罪に問われた無職、大山和歌(かずか)被告(38)=神戸市西区。14日、大阪地裁で開かれた公判での被告人質問では、沈黙や「思いだせない」と投げやりな返答を繰り返し、検察官に「あなた自身のことですよ」ときちんと答えるよう何度も指摘された。

 そんな大山被告が法廷で唯一はっきりと訴えたのは「子供に会いたい」。小学生の息子に会えないいらだちが事件の引き金の一つだったという。

 大山被告は今年6月14日午後1時15分ごろ、大阪駅のホーム付近で女性2人の背中に縫い針を刺し、22日午後1時半ごろにも同駅のホーム付近で女性2人の左腕を持っていた化粧用カミソリで傷つけ、けがをさせたとして傷害と暴行の罪で起訴された。

 検察側の冒頭陳述によると、大山被告は息子と一緒に暮らしたいと希望しており、今年3月、実母と息子が大山被告の暮らす神戸に引っ越して一緒に生活する約束をしていたが、実母の都合で延期に。週1回しか息子と会えないことにイライラしていた。

 さらに4月末には、店で購入した牛乳を飲んで体調を崩し、病院で血液検査をして店にクレーム。しかし店側からは牛乳には異常はなかったとの回答で、病院代は自分自身で払うことになり、たびたび請求を受けていた。

 6月22日にはJR東海道線で大阪駅に向かう途中の芦屋駅で、左腕が扉と戸袋に吸い込まれて内出血したことで立腹。「誰かに仕返しする」と決意した-。

 「つけまつげやアイラインを欠かさなかった」(近所の住民)という厚化粧から一転、大山被告は地味な銀縁メガネをかけて14日の公判に出廷した。ぽっちゃりした体型に腰まで伸び切った茶髪。緊張しているのか、ピンクのタオルハンカチで何度も顔をぬぐう。

 弁護人が犯行の動機を尋ねると、思いのほか弱々しい声で答えた。

 「子供と一緒に暮らせないイライラやJRに腕を挟まれたり、顔に傷を付けられたり、いろんなことが重なってやった」

 逮捕直後、大山被告について大阪府警の捜査員は「被害妄想的な女」と表現した。数年前まで覚醒(かくせい)剤を使用していたといい、後遺症の可能性も指摘されている。

 高校卒業後、ガソリンスタンドやコンビニなどで働いたが、長く続くことはなかった。捜査関係者によると、数年前まで静岡県で元夫と暮らしていたが離婚。このころ覚醒剤を使用、逮捕されたという。

 半年前から神戸市西区で1人暮らしを始めたが、親の仕送りに頼る生活だった。子供も母親の元に引き取られていた。

 検察官の被告人質問では、大山被告の被害妄想的な面が浮かび上がった。

 検察官「イライラして人を傷つけたのか」

 被告「私も追い込まれる状況にあった。顔にも傷つけられて…。イライラした気持ちは解消されなかったが、多少は半減したかもしれない」

 検察官「顔の傷とは。どうして人に傷つけられたと思うのか」

 被告「自分ではやっていないから。私の部屋のものも何かとなくなる」

 検察官「被害妄想では」

 被告「違います。うそをついてるって言うんですか?」

 驚いたように抗議する大山被告。知らない間に人に顔を傷つけられるなどということが本当にあったのか、検察官は納得のいかない様子だ。

 検察官「相手の痛がるそぶりを見ることでイライラを解消したのか」

 被告「…。思いだせないから分からない。事情聴取に答えたとおり」

 検察官「あなた自身のことですよ。これまで考えなかったのか」

 被告「考える余裕がなかった。精神安定剤を飲めなくなって精神的につらくて、自分を支えるので精いっぱい。事件のこともあまり考えたくなくて」

 検察官「きちんと考えないと、同じことを繰り返すことになる」

 被告「…」

 検察官「今被害者がどんな気持ちか、考える余裕はないのか」

 被告「考えなきゃいけないのは分かっているが、自分が精神的に不安定で」

 裁判官「事件の時は精神安定剤を飲めていたのか。今より安定していたか」

 被告「そうです」

 裁判官「それにもかかわらず、針やカミソリで人を傷つけたのか」

 被告「…」

 被害者の気持ちも考える余裕がないという大山被告。弁護人はなんとか更生への前向きな言葉を引き出そうと、子供への気持ちを何度も尋ねた。

 弁護人「子供に対してどんな気持ちか」

 被告「会いたいです。迷惑をかけて、肩身の狭い思いをさせて申し訳ない」

 弁護人「今後どうしていきたいのか。親としての責任もあるでしょ。一番大事なことは何か、今までのようじゃいけないことは分かっていますか」

 被告「子供にはまめに手紙を書いているけどまだ返事がない。親にも子供の状況とか教えてほしいと言っているのに…」

 親を責めるかのような発言。大山被告の口から犯行を心から悔やみ、更生を誓う言葉が語られることは最後までなかった。

 左腕を切りつけられ、25針を縫う大けがをした20代女性は事件後、産経新聞の取材に「左腕のぱっくりと割れた傷口が脳裏に焼き付いている。恐怖で心臓の鼓動が速まり、自分は殺されていたかもしれないと思うと外出できない」と話した。今も後遺症に苦しんでいるという。

 息子は、事件と向き合わない母親をどう思っているのだろうか。(加納裕子)
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by deracine69 | 2008-10-18 19:06 | 社会  

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