静岡空港 異例の開港延期 立ち木 県、甘い見通し

2008年11月13日 朝日新聞

 来年3月にオープンするはずだった静岡空港が開港延期に追い込まれた。1.4㌔離れた場所にある立ち木が、航空法の高さ制限を超えていたのが原因。県は木を切るかわりに、滑走路は短縮という「奇策」を打ち出したが、立ち木の存在は前々からわかっていたはず。県の見通しの甘さに、関係者からは厳しい目が向けられている。(阪田隼人、佐々木学)

 石川嘉延知事が開港延期を正式表明した10月29日。県庁では富士山と飛行機を描いたポスターの「3月開港」に、職員が修正シールを張って回った。「同様のものは2万以上ある」。職員はそう言って肩を落とした。

 開港準備を進めてきた企業は頭を抱える。空港内で搭乗手続きなどの業務を予定している静岡市内の会社は、3月開港を見込んで50人以上を採用済み。開港がひと月遅れるごとに3500万~4000万円の損失が出るという。

 開港を阻んだのは、153本の立ち木だ。航空法は、航空機が安全に離着陸できるよ、空港周辺に「制限表面」という障害物の高さ制限を設けている。立ち木はこれを最大で12.7㍍超えていた。

 静岡空港は、建設に反対する地権者の茶畑や山林を強制収容して工事が進められた。ところが、木の伐採を強制できる範囲を確定した際、測量データや修正にミスがあり、立ち木がある場所が対象から漏れてしまった。

 立ち木所有者の男性は、反対派地権者らが国の事業認定を無効だと訴えている訴訟の原告の一人でもある。男性は07年から空港建設事務所の現地職員に立ち木の存在を再三指摘してきた。しかし、県は問題を認めなかった。

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 静岡空港には、日本航空や全日空を含む4社が札幌や福岡などへの就航を表明。立ち木の処理のめどが立たない中、県は「遅くとも7月」の開港を約束。そのために打ち出したのが、滑走路を短くするという異例の作戦だった。

 制限表面は航空機の離着陸コースに沿うように、滑走路の端から斜めに高くなっていく。滑走路を短くして制限表面の始点をずらせば、立ち木の高さは変わらなくても制限内に収められる。

f0013182_10563773.jpg だが、単純に始点をずらすだけでは、2500㍍の滑走路を1600㍍程度まで切り詰める必要がある。そこで短縮は2200㍍ほどにとどめ、制限表面の傾斜度を急角度にしてしのぐことにした=

 だが、急斜面になると、計器着陸装置(ILS)が使えない。パイロットは目視のみで着陸しなければならず、悪天候時は行き先を変更しなければならない。

 静岡空港にはILS完備の空港として、国から約225億円の補助金が出ている。国土交通省の担当者の一人は「前代未聞だ。お粗末すぎる」とあきれる。立ち木の問題は今年初め、県から報告があったが、その時は「すぐに解消できる」という説明だったという。

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 各航空会社は表向きは、「大きな影響はない」と受け止めている。だが、ある大手航空会社幹部は「地方路線が次々とリストラされるなか、あえて飛ばそうとしているのに」と不満を漏らす。

 日本航空、全日空ともに、地方空港を結ぶ路線は厳しい。今秋以降、日航は計16路線で廃止・減便する方針を打ち出している。苦しい台所事情の中、静岡に関しては、地元の要請に応えようと何とか採算のめどをつけ、就航を決めた経緯がある。

 開港の遅れにより、両社とも機体や乗員らの配置の見直しを強いられている。運航の安全性の検証も新たに必要だ。修学旅行や団体旅行の予約をキャンセルしたり、最寄りの羽田や中部空港に振り分けたりする作業もある。

 「残念です。一日も早く本来の姿となるよう努力をしてください」。国交省の渡辺一洋空港部長は工事の延期申請のために訪れた川口正俊副知事にこう求めた。だが、滑走路が当初計画の2500㍍に戻るのはいつなのか、見通しは全く立っていない。
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by deracine69 | 2008-11-13 06:00 | 社会  

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