ジャーナリスト・ラウンドテーブル 解散回避に見る日本の政治とメディアの現状

2008年11月14日0時0分 ビデオニュース・ドットコム
ゲスト:角谷浩一氏(政治ジャーナリスト)、上杉隆氏(ジャーナリスト)、横田由美子氏(ルポライター)

 今回は、ジャーナリストたちが日頃取材しているテーマを徹底的に語り合う「ジャーナリスト・ラウンドテーブル」として、『永田町コンフィデンシャル』の司会者としてお馴染みの角谷浩一氏、マル激には3回目の登場となる上杉隆氏、小池百合子議員ら主に女性政治家を取材してきたルポライターの横田由美子氏の3人のジャーナリストにご登場いただき、神保・宮台両氏の司会のもとで、解散論争の虚実や麻生政権の現状、民主党の今などについて、自由闊達に議論を展開してもらった。

 自民党総裁選中の9月18日に朝日新聞が「26日総選挙」の大誤報を打ったことについて、上杉氏は、一連の解散報道が、政治ジャーナリズムの現状を映し出していると指摘する。朝日もそれを後追いした新聞各社も、誤報の事実を認めず、30日の麻生首相の会見で当分解散が無いことが明らかになっても、依然として「先送り」「先延ばし」などの言葉を使用して、解散ありきの姿勢をとり続けた。

 また、メディア各社が早期解散の根拠としている、都議選を重視する公明党の意向というものも、実は根拠が怪しいことがわかった。上杉氏が、過去5回の都議選を調べたところ、そのうち4回は都議選の前後1、2カ月以内に国政選挙が行われており、しかもいずれの選挙でも公明党が勝利を収めている。

 事ほど左様に、此度の解散をめぐるドタバタからは、今の日本の政治とメディアのさまざまな実情が浮き彫りになってくるようだ。

 そのほか、麻生政権の内情と30日に発表された追加経済対策の評価、はっきりしない民主党小沢氏の健康問題、女性政治家が活躍する条件等々、日々永田町で取材を重ねる3氏と、解散もできない政権と、誤報を認めることさえできないメディアの狂想曲の行方を、一つのテーブルを囲んで徹底的に語り尽くした。

解散騒動は一体何だったのか

神保:元々、本日10月31日頃に解散がある予定だった。それが、何がどうなって、解散はなくなったのか。
 
上杉:解散報道というのは、朝日新聞が総裁選の最中の9月18日に、10月26日に総選挙で与党合意と出したのが最初だ。一面トップでここまで断定的に書くのは社運もかかっていて、政治グループ全体、編集局も絡んだ大きな勝負に出たということだ。しかし、結果は誰もが知っているとおり誤報だった。

 そこからマスコミが何をやるかというと、新聞社はこの誤報を糊塗するために「先送り」という言葉を使い、11月2日に先送りとし、やらなければまた先送り、見送りと。ただ、臨時国会が閉じてしまったら誤報になってしまうので、その場合は麻生総理「断念」と。現時点ではほとんど私が以前の記事に書いたとおりになっている。

 今まで誤報はごまかせたというのが根底にあって、誤報に対して新聞ジャーナリズムは謙虚に取り組んでこなかった。ただ、今回はあまりにも回数が多すぎて限界が来て、各紙が検証記事に近いものを載せたが、どうも言い訳で、検証のわりには全紙とも事実関係が違うという珍しい状況になっている。

 解散報道というのは日本のジャーナリズム、特に政治ジャーナリズムの正体を示す良い材料になった気がする。
 
神保:首相自身が雑誌記事の中で冒頭解散をする意志を表明しているのに、それが起きなかったことはどう見ているのか? 首相の言葉はそんなに軽くていいのかとの思いを禁じ得ない。麻生はもはや解散することさえも出来ないほどにレームダック化しているということなのか、それとも、実は最初から解散する気がなかったのか。
 
上杉:政治の中にいると分かるが、総理大臣の解散権というのは嘘をついてもいいし、何を言ってもいい。最強の武器で、まさにそれこそ伝家の宝刀として総理だけが持っている。そういう武器を一つの雑誌に言うというのは、議員にしろ、秘書や政党職員にしろ、政治の中にいる人は全員否定する。

 記事が出たとき、麻生首相が書いたかどうかは別にして、それはないだろう、書いたとしたらよほどバカだろう、と麻生氏の側近議員も言っていた。ついていけない、とはっきり言っていた。

 麻生氏本人の言葉を直近で聞いていても一言も聞いていないので、自分たちにも言わないことを、記者クラブにも加盟していない雑誌には出さないだろう、まさかそんなことはしないだろうと思うのが永田町の反応だった。
 
角谷:麻生氏の記事に関しては前代未聞という見方までで、麻生氏がお書きになりたければ、どうぞお書きになればいい。

 ただ、解散権は上杉氏の言うように伝家の宝刀であり、重大な決意があると海部総理が言ったときに、金丸信副総裁はやれるものならやってみろと言って、選挙をやるどころか、海部下ろしにまで広がってしまい、結果的に海部総理は退陣にまで追い込まれた。

 つまり、解散権を持っているのは総理自身だが、解散権を行使することは簡単ではない。それを、あえて仕掛けを作ろうとしたところに、今まで2代続いた1年足らずの内閣との違いを見せたかったという麻生首相の思いがあったのは分かる。

 ただ、総理になった直後に3つ問題があった。1つは支持率が上がらなかったこと。それから、小泉元首相の引退の発表だ。麻生首相には関係ないというかもしれないが、自民党自身が改革に逆行するのではないかという空気が生まれた。つまり、小泉氏のことを好きかどうかより、こういう声を挙げる人たちが減っていくのではないか、いわゆる昔の自民党に戻っていくのではないかという不安に駆られたというのが2つ目だ。そして、閣僚の何人かのスキャンダルが出たことだ。金融ショックというより、閣内に幾つかの火種が出来たというのが大きかっただろう。

追加経済対策は政策にあらず

神保:今回の追加経済対策で1人あたり12,000円配ると首相が発表した。ものすごいばらまきだが、経済対策になるのかどうか。それに、同時に3年後の消費税引き上げとセットになっている。消費税を5%引き上げるとちょうど一人あたり12,000円くらいになるとの試算もあり、なんだ結局ばらまいておいて、後から回収するだけじゃないかとの声も聞こえてくる。何よりも、本当に日本は今こんなことをしていていいのか。
 
上杉:考え方によっては、今回のばらまきは政府が公職選挙法違反をして、票を大胆に売買しているともとれる。いきなり選挙前にばらまいて投票してくれと言っているようなものなので、本当に稚拙というか最低の政策で、誰でも出来るので政策と言わないと思う。
 
角谷:国民にばらまいて、まんべんなくやったような感じを持っているのは本人だけだ。つまり、これは本人の支持率浮揚のためで景気高揚のためではない。

 ついこの間までの安倍、福田両内閣まで行われていた議論で、若者と中年は雇用の不安を抱えていて、高齢者は医療と年金の不安を抱えているとされていた。経済対策でそこに手厚くやろうというのなら、なるほど、それなら安心する、景気対策になる、と納得感がある。しかし、みなさんに配るからどうぞ、というのは竹下内閣のふるさと創生1億円と変わらない。まんべんなくというのは政策ではない。

 本来なら今の問題は雇用と医療と年金で、そこを手厚くして理解を求めるところだ。それをやらなかったこと自体が、手をつけられない、手をつける気がないということであって、政策でも何でもないと思う。
 
横田:(主婦としては)うれしい。もらえるのならもらいたいから。ただ、国民もバカではないので、長期的に見ると支持率にはつながらないと思う。

 今回、麻生首相が駄目だと思ったのは、財務省に立派なバカだと言われていることだ。3年後に消費税を上げると言ったことで、ありがたいと。目先の支持率に騙されて、そういうことになってしまったのだなというのが見えてくる。
 
宮台;麻生首相は3年後に総裁をやっていないだろう。そうすると、3年後の話はただのリップサービスとしか言いようがない。役人達に怪文書をばらまかれないように、辻褄合わせのための相殺感情は考えているかもしれないが、3年後のことを約束する当事者能力が麻生首相にはない。 
 
神保:支持率もあがらないしどうにもならなくなり、ばらまいたら少しくらいは支持率が上がるかもしれないということで、自暴自棄をやったのが今回の追加経済対策なのだろうか?
 
宮台:そこまで自暴自棄なのではなく、「オレ様ナルシスト」なのだと思う。森派の幹部が決めた日程に従いたくなく、マスコミの予想通りに振る舞うこともしたくないし、先行きの怪しい自民党に忠誠を誓っても仕方がないし、麻生首相がオレ様的に誇りある存在としての存在を見せてやろうと言うところではないかと思っている。
 
上杉:経済政策に限って言うと、無知による政治的良心の欠如ではないか。例えば与謝野馨経済財政担当相や谷垣禎一前政調会長が総裁だったら、こんな目茶苦茶なことを言ってしまったら、言った本人が恥ずかしく思うのではないか。ところが麻生氏は恥ずかしいと思うほどの知識もないので、政治的な良心もなくなってこういうことを言ってしまう。
 
角谷:見通しがないまま政権を維持しているというのはここ数年で顕著な例であるが、選挙が出来るか出来ないかというよりも、逆に言うと解散権を持っているのは麻生首相だけで、解散できるタイミングがない。

 ただ、任期満了までと言うけれど、追いつめられて解散できないまま追い込まれていく任期満了であって、そつなくやって迎える任期満了ではないというのは、間違わないようにしないといけない。

 例えば自民党は金融危機で選挙をやっている場合ではないと言ったが、1~3月に倒産ラッシュが来たとすると、そこで選挙をできるのか。つまり、選挙をやっていい時期というのは来年の9月までなくなってしまった。やっていい時期は総辞職と引き替えだったり、別の事情が動くときであって、「ままよ内閣」、やってみるしかない、やってみて結果で考えようということだ。

 おそらく歴代総裁の決断の中で、どうなるかわからない選挙に突入したということはそうたくさんはないと思う。
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by deracine69 | 2008-11-14 00:00 | 政治  

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