つくる会と扶桑社が対立 教科書著作権で譲らず

2008年11月15日 朝日新聞

 「新しい教科書をつくる会」が分裂し、対立が訴訟に発展している。袂を分かった元会長に対し現会長が起こした名誉棄損訴訟は請求が棄却された。だが、現会長はさらに、これまでの発行元の扶桑社を相手に発行差し止めを求めて争っている。両派はそれぞれ新たな教科書の発行を目指しており、それが事態を複雑にさせている。(中井大助、石川智也)

 名誉棄損訴訟を起こした藤岡信勝会長(拓殖大教授)は10月31日、東京地裁で敗訴した後、記者会見して「極めて残念。断固控訴する」と語気を強めた。

 この訴訟で。藤岡氏は「つくる会を立ち上げた後の01年まで日本共産党に在籍していた」という趣旨の怪文書をばらまかれたとして会長も務めた八木秀次・高崎経済大教授に賠償を求めた。だが、判決では「八木氏の関与は認められない」と認定された。

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 つくる会は、「自虐史観を排した」歴史や公民の教科書に普及を目指し97年1月に結成された。内部対立やメンバーの脱会を繰り返しながらも、教科書は00年度と04年度の検定に合格。だが、各地の教育委員会による採択ではふるわず、05年の採択率は歴史0.4%、公民0.2%と、目標の10%に及ばなかった。

 そんな中、会のあり方や運営をめぐって藤岡氏らと対立した八木氏が06年、複数の理事とともに脱退。その経緯をめぐり、藤岡氏や西尾幹二元会長(電気通信大名誉教授)との対立はさらに深まり、月刊誌などで互いに批判する事態となった。

 発行元の扶桑社はこれ以上、つくる会と教科書を出すのは困難と判断。「新しい酒は新しい皮袋に」という言葉を引用し、07年2月「賛同していただける各界の方々」の協力で新たに刊行する方針を表明した。つくる会側によると「原稿の教科書への教育委員会の評価は低く、内容が右寄り過ぎて採択がとれない」と説明されたという。

 八木氏は同年7月、「教科書改善の会」を立ち上げ、扶桑社が新設した子会社・育鵬社と協力し、指導要領の改訂に合わせて12年度から使われる教科書を作ると発表。つくる会は2カ月後、自由社から次の教科書を出版することを決めた。

 それぞれ独自に教科書作りに取り組むとみられたが、つくる会側は今年4月、10年度から使われることを目指して現行版を「一部改訂した」中学歴史教科書を検定申請。それに続いて藤岡氏や西尾氏ら4人が6月、扶桑社を相手取り、自分たちが関与した約160㌻分を削除しない限り、現行版とその市販本を出版・販売してはならないと求めて提訴することになった。

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 つくる会側が新たに申請した教科書が検定合格すれば、独自路線どころか執筆陣の重なる扶桑社版と自由社版が同時に存在することになる。

 訴訟に提出された証拠によると、検定申請直後の4月8日、扶桑社側は藤岡氏に「著作権者全員の了解を得なければ。同一内容の教科書の制作・発行は著作権法に抵触することは明らか」「違法行為とならないよう、十分ご留意されるようご忠告を申し上げます」と通告した。

 つくる会側も譲らず、提訴前の5月下旬、「最後の通告」として、「(扶桑社側の見解は)明白な権利侵害であるのみならず、学校教育現場に多大な混乱を引き起こす行為」と、今後の出版を見送るよう求めた。

 そもそも教科書の著作権は誰にあるのか。

 文部科学省によると、記述の分担や監修のあり方によっても異なり、明確な契約がないと判断が難しいという。今回の場合、扶桑社側は「(教科書の基準となる)次の学習指導要領の実施までは、現行版を使うことで関係者は合意していた」と主張する。しかし、口頭了解で文書はない。

 つくる会側は「執筆した部分については自分たちにある」と主張。扶桑社側は「教科書は編集者、監修者も関与した共同著作物」と反論しており、法廷で両者が譲る気配はない。
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by deracine69 | 2008-11-15 06:00 | 社会  

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