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リビアと米国 国交正常化 「日の丸油田」実現に追い風

 ■鉱区権益すでに獲得/原油相場緩和も

 石油の確認埋蔵量が三百九十一億バレル(一バレルは百五十九リットル)と世界九位にランクされる北アフリカの社会主義国リビアが国際社会に復帰する。ライス米国務長官が十五日、テロ支援国指定を解除し、対リビア関係を完全に正常化する方針を決めたと発表した。対米関係の改善をテコにリビア原油が国際マーケットに本格流入すれば、ヒートアップする原油相場の緩和にもつながりそうだ。またリビアでは昨年、三菱商事など日本企業が鉱区権益を獲得しており、「日の丸油田」実現にも追い風だ。(黒川信雄)



 一九八八年に英国で起きたパンナム機爆破事件をめぐって国連安保理がリビア制裁を決めるなど、テロ支援活動を背景に米国と長年対立してきたリビア。しかし革命指導者で事実上の元首の最高指導者、カダフィ大佐が二〇〇三年、パンナム機事件で遺族への補償金の支払いや大量破壊兵器の廃棄を決定した。

 こうした歩み寄りを評価した米国は〇四年に首都トリポリに連絡事務所を開設。関係正常化のタイミングを探ってきた。同事務所は近く大使館に格上げされることになる。ライス国務長官は同日、「(対リビア国交正常化以外の)重要懸案についても論議できるようになる」とも指摘し、産油国リビアとの関係改善への期待をにじませた。

 これまで米系メジャー(国際石油資本)はリビアで油田開発に関係できなかったが、原油生産量は〇三年で日量百六十万バレルとナイジェリア、アルジェリアに次ぎアフリカ三位。イタリアやドイツなどに輸出されてきた。「メジャーの進出で国際市場にリビア原油が流入すれば需給緩和につながる」(三菱総合研究所の山田聡主任研究員)との期待も高まってきている。

 しかもリビアでは「日の丸油田」開発も注目されている。

 昨年十月に、三菱商事、新日本石油開発、帝国石油など日本企業五社がリビアの内陸部や地中海沿岸地帯の海底や陸上など六鉱区で、油田の開発権益を獲得。本格生産に向けて作業を進めている。リビアは中東産油国と比べて入札プロセスなどの透明性が高いとされ、三菱商事などでは対米関係正常化を契機にリビアで、「新たな鉱区権益の入札もありうる」とみている。

 リビアと日本の経済関係は現在、リビア産魚介類の輸入などにとどまるが、油田開発をステップに石油化学プラントの輸出など重工業分野での投資に発展する可能性もある。核開発問題で揺れるイランからの原油輸入が困難に陥れば、日本は新たな原油調達先の開拓を迫られることになる。

 地中海に面するリビアが有望な産油国として浮上してきたことは、日本のエネルギー政策上も吉報といえそうだ。

 また、米政府はリビアによる大量破壊兵器の放棄が同国の経済にとり、大きく寄与したとの認識を示し、イランや北朝鮮に対しても「リビアケース」を手本とするよう呼びかけた。

 これについて日本も、「米国と歩調を合わせる」(外務省筋)考えだ。

 強硬な政策を放棄したリビアに対し、日本が投資を活発化させている事実を国際社会にもアピールしていく。

 ただ、北朝鮮と軍事技術交流も過去に行ったカダフィ大佐らリビア指導部が、どのような経緯で軌道修正したのか、再びテロ支援国家にならないかなど国際社会は監視を続ける必要もありそうだ。

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【用語解説】リビア
 地中海に面する北アフリカの国。正式名称は大リビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ国。日本の約4・6倍の約176万平方キロ。英仏から1951年に独立したがカダフィ大佐(63)が69年のクーデターで27歳の若さで権力を握り最高指導者に。アラブ社会主義連合(ASU)による一党支配も続いている。米国は人権問題での改善も求めている。カダフィ氏の正式称号は革命指導者であり大佐は通称。軍の階級には、大将など大佐以上の階級もある。

(フジサンケイ ビジネスアイ) - 5月17日8時57分更新

by deracine69 | 2006-05-17 08:57  

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