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安倍首相*理屈が通らぬ続投宣言

7月31日 北海道新聞 社説

 「改革を進めるのが自分の使命だ」。安倍晋三首相は疲れきった表情でこう言い切った。敗北の将の続投宣言に拍手を送った人がどれだけいただろう。

 参院選の惨敗を受けた記者会見で、首相は「すべての責任を負っている」と潔さを見せた。だが辞任する考えはないのだという。

 責任はあるが、取らない。この不思議な論法が国民の政権不信に拍車をかけることを首相は分かっていない。

 辞めない理由の一つは政策の基本路線について国民の理解を得られたからだという。根拠を聞かれ「演説の聴衆の反応で分かった」と答えた。

 首相の感覚より確かなのは参院選で示された民意だ。自民党の獲得議席は三十七。下回れば首相の進退問題に発展するとされた一九九八年の四十四議席を大きく割り込み、結党以来最低だった八九年の三十六議席に迫った。

 有権者が首相の退場を求めたと見るのが常識というものだ。

 首相は「改革のスケジュールを示し約束している」と述べ、国民との約束を果たすことも続投の理由に挙げた。

 十カ月の政権実績を前面に掲げて戦った選挙で一敗地にまみれたのだ。その約束自体を有権者が拒絶したと考えるのが当たり前だ。

 国民の判断が示された選挙結果と正面から向き合わずに、いくら「国民の厳しい声を真摯(しんし)に受け止める」と反省されても信じられるものではない。

 首相がここまで続投にこだわるのは、逆風に遭った自分は不運な被害者だと内心思っているからではないか。

 だが年金記録不備問題も閣僚の失言や政治とカネの問題も、みな首相の足元で起きたことだ。不幸なのは適切な対応を迅速にしてもらえなかった国民で、最高責任者たる首相ではない。

 首相は衆院の解散も否定した。会見では「戦後体制からの脱却」に触れず、参院の主導権を握る民主党とよく話し合って国会運営に臨むと言った。

 民意に背き、安倍カラーを押し殺してまで退陣を拒むとすれば、一体何のためか。政権を担い続ける正統性を首相は最後まで説明できなかった。

 この状態で、辞任を当然視する世論や野党の攻勢に立ち向かっていくことができると本当に考えているのか。

 首相の辞任を求める声が自民党内から聞こえてこないことに驚かされる。辞意表明した中川秀直幹事長も当面は「敗戦処理」で居残るらしい。

 自分たちが担いだ首相が国民から不信任を突きつけられた。なのに早々と続投を容認する。これでは政権政党としてあまりに民意に鈍感すぎる。

 辞任論が高まらないのは有力な後継候補が見当たらないからだという。国民不在の論理だ。党内に活力はなく、人材もいない。それが現状なら下野して政権を野党に渡すしかなくなる。
安倍首相*理屈が通らぬ続投宣言

by deracine69 | 2007-07-31 08:00 | 政治  

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