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「豪快な号外」3000万部印刷で お金どーするの?

8月03日 10時04分 アメーバニュース

 皆さんは「豪快な号外」をご存知だろうか? 環境問題、特に地球温暖化に警鐘を鳴らすパンフレットのことで、街頭で配布されたりポスティングされたり、公共施設に置かれている。もしまだ見たことがないなら、こちらの公式サイトでダウンロード可能。



 読んでみてすぐに分かるのは、このパンフレットは環境問題への啓蒙という点ではかなりの出来で、まともなことが書いてある。私は学生時代に環境を専攻していたこともあって、この運動が一体どのようなものなのかを少し調べてみることにした。

 しかし調べてみて意外に思った。公式サイトを見れば分かるが、このパンフレットは借金を頼み込んで印刷され、しかもまだ配布しきれずに残っており、その上この借金を返すために追加の「寄付」の呼び掛けがなされている。

 ちょっと待った。それは逆ではないか。ボランティアというものは強いられることなく善意で集められた寄付を使って当面の問題を少しでも耐えやすくするという目的で行なわれるのではないか? それなのにこの運動は「当面の問題」である地球温暖化を含む環境問題を知らせる「パンフレットの印刷」という前段階で借金を作ってしまって、その借金を返すためにいまだに寄付を募っている。

 具体的に経過を追ってみよう。公式サイトによれば、この運動を主導するTEAM GOGO!の中村隆市氏と“てんつくマン”氏は共にNGOで環境問題に関わっている人だ。今回の「豪快な号外」なる「30秒で世界を変えちゃう新聞」はその表紙にあるように、当初は1ヶ月以上前の6月22日からの「キャンドルナイト」の告知を兼ねたものだったようだ。これは電気を使わない夜を過ごす提案で、各地でイベントも行なわれたらしい。そして環境省が行なったブラックイルミネーション2007の協賛的企画でもあるらしい。

 このエコな波に合わせて「豪快な号外」を印刷して配布しようということになったようで、オーマイニュースによれば3000万部を印刷したという。「豪快な号外」公式サイトによれば、これにかかった費用が1億2885万円、集まった寄付が1億1400万円弱、差額が1500万円弱のマイナスで、肝心の「豪快な号外」はまだ300万部以上余っている。

 現在は、仕方がないのでこれを1束500部で1000円+送料実費で引き取ってくれないかという呼び掛けの最中だ。

 驚かされるのは、このマイナスを借金として肩代わりしているのはTEAM GOGO!事務局ではなくこの運動の協力者また賛同者である一般の人々で、上述の公式サイトによるとこれらの人々からの事務局の借入金は現時点で2080万円。この運動のために100万円を集めることを自らかって出た“100万番長”と呼ばれる69人の人をはじめとする善良な人々がお金をTEAM GOGO!事務局に貸している形になっている。

 あれ? 何かおかしい、と感じた読者がいればその人は正しい。つまりこの活動の当初の予定は皆が喜んで1億円以上もの経費をポンと出して号外の印刷関連の経費がチャラになり、あとはその立派な号外を配れるだけ配って終わり、のはずだった。ところが目標額が集まらなかったので、100万番長や他の人々が寄付ではなく自腹を切ってまで渡したお金をTEAM GOGO!事務局はそれらの人に返せないのだ。

 その人たちが「いえいえそのお金は寄付として差し上げます」と言っていない以上、善良な人々に借金を負わせているというこの事実をTEAM GOGO!事務局はどう考えているのだろう。一刻も早くこの借金をきれいさっぱりボランティアの人々に返して、倉庫に眠っている300万部以上の実質「有料」となった「豪快な号外」の引き取り先が現れることを願わずにはいられない。

 このままでは、せっかくの啓蒙運動が借金を返すために四苦八苦する運動に転じてしまいかねないではないか。

 しかしそのような心配をよそに、予想外なことが生じ始めているようだ。公式サイトの上部バナーからリンク先に飛ぶと、先日起きた中越沖地震の被災地への救援基金を募り始めている。

 これは違うのではないか。「ほっとけないからそうしました」ということだろうか? 「ほっとけない人々のために借金を返すのを後回しにさせてください」という論法はどう考えてもおかしくはないか。

 この点に関し、公式サイトには次のような一文が載せられている。

「みなさん、TEAM GOGO!新潟メンバーが動きはじめました! 今回の号外で出来た借金への募金は少しおいといて、新潟地震への募金を集めましょう! その名も、困った時はお互いさまでしょう プロジェクト!」

 うーんそう来るのか。「これは身内で決めて身内で行なうことです。皆が納得していますが何か?」といった声が聞こえてきそうではある。しかしこういう状況下では、せっかくの救援基金なのに「まさか借金充当のための基金の流用なんてないですよね? どうぞ是非とも好きに使ってくださいという声をもしかして期待していません?」という本来であれば全く不要な心配をされかねない。

 いやもっとはっきり言えば、公表されている数字がどれもあまりにザルなのである。公式サイトによれば借入金は2080万円だが、てんつくマン氏の7月26日付のブログでは1800万円とあり、混乱させられる。

 現時点での総費用は1億2885万円とあるが、元々の目標額はそもそも1億2000万円で、公式サイトによれば「今現在も希望者へ号外を発送しているため運送費はさらに増えることになり、この目標額は随時変更になる可能性があります」と、これは失礼だがザルにもほどがある。

 Google等で「TEAM GOGO 号外 収支」といったキーワードで検索をかけると、同様の懸念が複数のサイトで言い表されている。まさかと思って「TEAM GOGO 詐欺」で検索をかけると、その結果に唖然とさせられた。

 それでTEAM GOGO!事務局にメールで問い合わせたところ、次のような正式な回答をいただいた。

――― 豪快な号外の募金はいつまで継続する予定ですか?

「この号外を制作した費用がまだ足りていない状態ですので、足りるまで続く予定です。このような業務的なことを掲載されるのですか?」

――― 貴団体の「業務的」なことに関してインターネット内で少なからぬ論議が生じていることを鑑み、ネット世論の提示のみならず貴団体の正式な声明を回答としてメディアに載せることにより、貴団体の寄付に関するあらぬ噂等を払拭するためにこのご質問を敢えてさせていただいています。最終的な収支報告はいつごろ行う予定ですか?

「8月31日を決算とします。そして、会計監査を9月初旬に藤本博之税理士事務所様にしていただきまして、すぐに監査の結果をホームページ等で掲載いたします。

 そこから3ヶ月以内に総会を開かせもらうことになっております。一度、税理士さんに確認をいただいて、募金の扱い等については問題がないと言っていただいています。このような情報は7月末に業務的な総括的報告をする時に、ホームページ掲載や携わってくださった方々に連絡していく予定にしていましたので、これから発表するところでした。(中略)どうか、正確な情報をしっかりお伝えいただきますように、よろしくお願いいたします」

――― 詳細な情報を本当にありがとうございました。

 こうしたやり取りをする限り、今回のこの運動に関わっている人の大多数は本当に純粋で人のいい、環境のことを心配しているごく普通の人たちに思える。やらないよりは何かやった方がいい、良いことであれば借金を作ってでもやった方がいい、被災者の人たちが心配だからそっちも当然ほってはおけない、と。

 しかし最後に水をかけるようで恐縮だが、今回のキャンドルナイトにせよ、仮に同じだけの電力なりエネルギーなりを海の向こうで使われてしまえば、地球全体で差し引きゼロであることは子供でも分かる。地球温暖化を含む環境問題は明らかに一過性の感情的な方法で正せるような問題ではない。たしかに今回のキャンペーンで地球温暖化の針を遅くすることはできたかもしれない。しかしその遅くできた分と今回の運動全体に必要とされた諸々との収支は釣り合っているのだろうか。

 今回集まった1億円以上の基金を最初から地球温暖化防止のために直接使いつつ、あの大変啓発的なパンフレットは個々の人が自分で印刷してポスティングするなり街頭で配布するなりすれば、収支もこの運動に対する評価も全然違ったものになっただろうに、と思わざるを得ない。

 しかしそんなことに気が付かない人々ではなかろう。オーマイニュースの記事上でてんつくマン氏自身が述べている。「あえて紙、なんですね。森林伐採の問題を考えるきっかけになると思う。(中略)結果が評価されてもされなくても関係ありません」。

 森林伐採の問題を考えてほしかったという別の意図もあって紙媒体使用、ですかそうですか。最近流行のブランド物のエコバックにも別の意図の部分がある。エコや環境は人心やお金を集めやすいテーマであるゆえに、エコや環境の名のもとに政治的商業的成功を得るという意図は、決して悪いものではないものの見過ごされやすい。

 その一方でTEAM GOGO!関係者が今度の震災救援のために300万円の借金をしているからなんとかしてあげようとか、日本を変えるためにぜひとも選挙に行って云々とか、可哀想なアジアの子供たちのためにあともう100万円の寄付をよろしくとか、てんつくマン氏自身は今回の借金の問題をあたかも他人事のように考えているのか、来年1月から修行の旅に出ますとかブログで書いているのを見ると、正直この人たちは純粋なのか素なのかは知らないが、意図がさっぱり分からない。

 こんなことは言いたくはないが、善良な人々を集めて募金を募り借金までして、「豪快な号外」で本当は一体何がしたかったのか。

文■越田推(ライター)

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・TEAM GOGO!

by deracine69 | 2007-08-03 10:04 | 社会  

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