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「政権乗っ取り」に動く麻生の野望

2007年09月03日 16:52 データ・マックス
正成の政界インサイドレポート

 最高権力者は時に「非情」でなければ権力を保てない。
 安倍首相は今回の内閣改造でお友達大臣たちをスパッと切り捨て、派閥均衡型のガス抜き人事に徹した。自分のクビが危ういのだから、選択の余地はない。政権延命だけを考えた人事だったが、皮肉なことに、新内閣には総理を本気で支えようという顔ぶれはほとんどいない。

 その陰で強大な力をつけたのが念願の幹事長に就任した麻生太郎氏だ。参院選大敗のその日にいち早く続投を支持し、安倍首相の信頼を得た麻生氏は閣僚・党人事で露骨に意に沿わない安倍側近たちの排除に動き、巧妙に党の金庫と事実上の人事権を握った。

 改造内閣は「A2政権」、つまり安倍ー麻生連合政権と呼ばれるが、2人の盟友関係はそこまで。麻生氏は、つっかえ棒を失った安倍首相にかわっていよいよ「天下取り」の爪を研ぎ始めた──。
■ 丸裸にされた安倍

 森 「改革と聞いただけで、虫酸が走る人が地方にはいる。もうちょっと柔軟に、きめ細かく360度の視野で取り組まなければならない」

 麻生 「地方の疲弊はひどい。小泉改革路線の転換をはからないと自民党は次の総選挙でも必ず負けます。私は政策の大転換をやるつもりです」

 8月5日、森喜朗・元首相と向かい合った麻生氏はそう約束した。

 麻生氏と森氏は同じ文教族でサッカーくじ導入に力を合わせた仲だが、昨年の組閣では森氏は安倍首相が望む「麻生幹事長」案に反対し、側近の中川秀直氏を推した経緯がある。 それだけに、最大派閥のオーナーである森氏から幹事長就任の承諾と麻生執行部の党運営への支援を得ることが麻生氏の政権戦略には欠かせないステップだ。

「森さんは参院選敗北直後、福田康夫擁立を仕掛けようとして失敗し、その後も、『安倍君には総選挙をまかせられない』と漏らしている。今や安倍後見人ではない。その森さんにポスト安倍に推してもらうことが麻生政権をつくる絶対条件になる」

 麻生側近はそう見ている。

 その森氏は改造人事で党執行部を他派の麻生氏に任せるかわりに、内閣には町村派(旧森派)会長の町村信孝氏を官房長官に据えて、安倍首相を監視させるつもりだった。

 しかし、安倍首相は口うるさい年長の町村氏がお目付け役になることを嫌がり、お友達の一人で豪腕の菅義偉・総務相を官房長官に横滑りさせるつもりだった。そうなると、町村派は党も内閣も握れない。森氏は抵抗した。

「町村官房長官─菅副長官」

 安倍首相と森氏の妥協が成立しかけた時に、改造直前になって菅氏の事務所費問題が発覚。閣外に去り、この人事構想は幻に終わる。

 そうなると、町村官房長官だけでは安倍首相が頑としてクビを縦に振らない。その間隙を突いて麻生氏が推したのが関係良好な与謝野馨・官房長官だった。実務派で手堅い人選ではあったが、結果的に安部首相の出身派閥の町村派は党3役も官邸からも遠ざけられた。

「お友達内閣と言われたが、年少組が年中組になっただけだ」

 森氏が町村派からわずか大臣1人となったことに不満を鳴らすと、安倍首相も感情的になって、「政策実行力で今度の内閣、自民党の新役員を決めた」と、不快感をにじませた。

 安倍─町村派の分断によって、首相はお友達も派閥の先輩もいない官邸で完全に丸裸になったのである。

 信頼できる腹心がいなくなった安倍首相に対する麻生氏の発言力は高まり、麻生氏は今度は自分の「お友達」人事に走る。

■ 麻生の古賀排除と「お友達」人事

”オレは幹事長しか受けない。麻生の風下に立てるか”

 改造直前、総務会長就任が有力視されていた反主流派の実力者、古賀誠・元幹事長が執行部入りを拒否したという話が永田町に流れた。が、真相はかなり違う。

 古賀派の幹部は、背景に麻生─古賀の確執があると指摘する。

「麻生は当選9回の同期で自分よりはるかに早く幹事長になった古賀さんにライバル意識が強い。古賀さんは3役入りを受けるつもりだったが、麻生はそれを阻止するために、幹事長代理に内定していた二階俊博を推した。古賀さんも盟友の二階が総務会長では文句が言えないし、かといって今さら格下の幹事長代理になれるはずがない」

 麻生氏は政調会長代理人事でも、安倍首相が強く求めた古賀派の塩崎恭久・前官房長官の起用を蹴り、かわりに山崎派の渡海紀三郎氏を選んだ。同じ福岡選出の反主流派の実力者の中で、古賀氏とは距離を置き、山崎拓・元副総裁に配慮する姿勢を鮮明にしたのだ。

「私も悲しい思いの一人かもしれないが、辛抱強く乗り切っていかなければいけない」

 古賀氏は派閥の総会で悔しさを隠さなかった。

 さらに党内を驚かせたのは、麻生氏が改造で鳩山邦夫・法相を押し込んだことだ。鳩山氏は津島派ながら昨年の総裁選で麻生氏の選対本部長を務め、

「総裁選に負けても”打ち上げに使ってくれ”とポンと100万円出した」(麻生側近)

 ほど。その恩を返したわけである。

「麻生は執行部だけでなく、閣僚人事まで左右した。今や安倍首相以上の力だ」

 町村派議員は麻生台頭をそう警戒する

■ 麻生派内の不満

 小選挙区制度のもとでは、公認権を持つ幹事長の権限は強大だ。党の実権を握った麻生氏は、郵政選挙の刺客として当選してきた小泉チルドレンを「選挙準備に専念せよ」と役職に起用しない方針を打ち出してベテラン組の喝采を浴び、その一方で入閣できなかった町村派などの大臣待望組を次々に党役員に起用するなど、人事権をフルに使って「ポスト安倍」に向けた地盤固めに余念がない。

 安倍首相を町村派の庇護から切り離し、安倍お友達も干し上げた。

”もはや裸城になった安倍などこわくない”

 そんな思惑さえ透けて見える。

 しかし、麻生氏にも死角はある。

 足元の麻生派内から、こんな声があがっているのである。

「うちの派は小泉、安倍内閣で麻生さんがずっと閣僚や党3役で重用されてきたから、他の議員にはポストが回ってこなかった。それなのに、今回もまた、麻生さんは森英介氏や鈴木恒夫氏という派内の入閣待機組をさいおいて鳩山入閣を推した。次の総裁選びに鳩山氏の資金力をあてにしているからだ。一将功成って万骨枯るとはこのことだよ」

 9月10日にはいよいよ正念場の臨時国会が始まる。

by deracine69 | 2007-09-03 16:52 | 政治  

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