福田新総裁 速やかな総選挙で民意を
9月24日(月) 信濃毎日新聞自民党の新しい総裁に福田康夫元官房長官が選出された。25日には国会で、次の首相に指名される段取りだ。
参院選の大敗に続き、安倍晋三首相が政権を放り出したことで、自民党の信頼は大きく傷ついている。党再生の重い課題を背負ってのスタートだ。
自民党は何を目指す政党なのか、暮らしを守るためにどんな政策を取るのか、小泉-安倍路線のどこをどう修正するか。ここをはっきりさせるのが党再生の出発点になる。
その上で速やかに衆院を解散し、国民に信を問うべきだ。
<がけっぷちに来て>
小泉前政権の5年間のかじ取りは、郵政民営化をてことした新自由主義 1 2 な競争促進策が大きな特徴だった。その結果、大都市と地方の経済格差が広がった。所得格差も拡大し、「ワーキングプア」といった言葉が生まれた。
競争によって生じたひずみや亀裂を、首相の個性や巧みな政治手法で取り繕ってきたのが、小泉政権の5年間だったと言えるだろう。
安倍首相は小泉路線を基本的に引き継ぎつつ、「美しい国」「戦後レジーム(体制)からの脱却」の言葉に象徴される復古調の政策を接ぎ木しようとした。暮らしの立て直しは後回しにされた。
そうした6年間の“無理”が限界に来ていたことを示したのが、先の参院選だった。対照的に、「共生」をキーワードに、格差是正を強調した小沢民主党は大勝利を収めた。
自民党はかつては、選挙に負けると新しい総裁が前の政権とは違う政策を打ち出し、軌道修正することで政権を維持してきた。「振り子」の作用である。
総裁選で福田氏は、小泉政権が進めた競争政策に伴うひずみを是正する考えを強調してきた。参院選敗北の原因を考えれば、妥当な対応といえるだろう。
<政策の幅は広くない>
対立候補の麻生太郎幹事長は、小泉-安倍政権の路線を踏襲する考えを示してきた。福田氏が勝利を収めた経過からは、競争重視の政策に対する疑問が党内でも高まっていたことがうかがえる。
難しいのはここから先だ。財政事情を考えれば、かつてのようなばらまき政策には戻れない。競争政策の基本を修正すると、財界など旧来の自民党支持層の利害とぶつかる可能性も出てくる。福田政権がとり得る政策の幅は広くない。
総裁選で福田氏は「自立と共生」を掲げた。自立と共生がどう両立し得るのか、分かりにくい。政権が目指すところは、昨日の記者会見でもはっきりとは示されなかった。
小泉-安倍政権の6年間をどう評価するか。どの部分を引き継ぎ、どこを修正するのか。まずはここを明確にすべきだ。その上で、少子高齢化にどう対処するか、基本的考え方を示してもらいたい。
福田氏に課せられた当面の課題の1つに、衆院の解散・総選挙がある。可能な限り早い段階で解散し、国民の信を問うべきだ。
理由は3つある。第一に、新しい政権ができたときは基本的に、国民の審判を受けるべきだからである。
安倍政権は選挙を経ないまま、教育基本法改正、防衛庁の「省」への昇格など、国の在り方にかかわる政策を推し進めた。本来は許されないことである。
第二に、与党がいま衆院で握っている議席は、郵政民営化の是非を争点に行われた2年前の総選挙で手にしたものである。2年前の民意を反映した議席がいつまでも続くのは好ましくない。
第三に衆院がいつまでも改選されないと、参院の多数を握る民主党と健全な競争、協力の関係をつくるのは難しい。仮に次の総選挙で自民党が勝てば、民主党も自民党の意向をある程度尊重せざるを得なくなる。
次の総選挙は、自民党が与党の座を守るか、民主党が政権を奪い取るかの決戦になる。福田政権のスタートは、解散・総選挙をにらんだ緊張感ある政治の始まりだ。
政権は差し当たり、選挙管理内閣の性格を帯びることになる。
<正念場は民・公も>
民主党にとっても大事な場面だ。
民主党に一度、政権を任せてみたい-。有権者にそう思ってもらうためには、政権担当能力を認めてもらわなければならない。
参院選で民主党が掲げた基礎年金の全額税方式や農家の戸別所得補償の公約は、財源の手当てを含め、粗削りな面が少なくない。総選挙に向け、痛みの側面も避けないで、国民に訴えることだ。
政権を引き寄せるには、野党共闘を幅広く探ることも必要だ。党の懐の深さが試される。
最後に公明党である。「平和と福祉」を表看板にしながら、小泉-安倍政権の6年間、自民党のペースに引きずられることが多かった。インド洋への海上自衛隊派遣にゴーサインを出したのは象徴的だった。
参院の多数を民主党が握ったことで、自民党は法案を通すために民主党との調整が欠かせなくなった。公明党の立場はその分、弱くなった。
立党の精神に立ち返り、党の立場を明確に打ち出さないと、存在感はますます薄くなるだろう。公明党にも後がない。
by deracine69 | 2007-09-24 23:59 | 政治