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集票力失った「台湾人意識」

3月22日21時42分配信 産経新聞

 【台北=長谷川周人、河崎真澄】民進党の総統候補、謝長廷氏は投票前日の21日夜、台北市内で開かれた最後の集会で、「馬英九氏が当選し、住民投票が成立しなければ、国際社会は台湾人が『台湾は中国の一部』と認めたと受け取る恐れがある」と悲壮な表情で訴えた。しかしその声は有権者に届かなかった。過去2回の総統選で民進党を支えたのは「自分は台湾人だ」と考える「台湾人意識」の高まりだった。謝氏も最後までそれを強調したが、集票の原動力にはならなかった。

 蒋介石政権下で「中国人教育」が台湾に浸透したが、台湾生まれで初の総統となった李登輝氏の政権時代に台湾人意識に火がついた。台湾の政治大学選挙研究センターの調べでは、自分を「中国人」と考える住民の比率は昨年6%を切り、「自分は台湾人でもあり中国人でもある」との意識をもつ層を加えれば、89.5%までが「台湾」を意識したアイデンティティーをもつに至った。しかし、陳水扁政権はこの8年、新憲法制定を公約にしながら実現できないなど、台湾人意識に水をさすような政策に終始した。有権者は結局、国際社会に台湾人の存在感を示す理想論よりも、低迷する経済の打開に向け中国との連携を訴えた国民党の現実策を選択した形だ。

 また、陳総統とその家族をめぐる金銭疑惑、さらには政策運営能力に対する批判票が、国民党の馬氏に流れた点も見逃せない。謝陣営は「馬氏が『1つの中国』を認めれば中国製品が押し寄せてくる」と危機感をあおり、対中融和に傾く国民党の姿勢を繰り返し批判。台湾人意識の高揚で結束を固めようとした。しかし、激しい与野党の中傷合戦は台湾世論を分裂させ、若者を中心に政治への嫌悪感を助長、豊かさと安定を希求する民衆を失望させた。終盤戦、チベット騒乱などが謝陣営の追い風となったものの、逆転勝利には結びつかなかった。

 一方、「台湾」名義による国連加盟をめざす民進党の住民投票をめぐっては米中両国などが猛反発。国民党は事前にボイコットを決定、この段階で不成立が確実視されていた。住民投票は陳総統が政治的思惑から実施を決断したものだが、結局不成立に終わり、本心では国連の1員となりたい台湾住民の心を傷つける形となった。

by deracine69 | 2008-03-22 21:42 | アジア・大洋州  

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