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チベット問題、中国強気の理由は経済の重さ

2008.4.14 21:11 MSN産経ニュース

 【北京=矢板明夫】中国のチベット自治区などで起きた大規模な騒乱から14日で一カ月、中国当局は同地域の僧侶らに対する取り締まりを強化し混乱の再発を警戒する一方、国際世論が求めるチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世との直接対話を拒否している。強気な姿勢を貫く背景には近年の高度経済成長がある。国際社会における中国の経済的、政治的影響力が大きくなり、欧米諸国は本気で中国と対立できないとの自信が表れているようだ。

 14日付の中国共産党機関誌人民日報傘下の「環球時報」は「欧米諸国の騒乱弾圧手段はみな厳しい」と題し、1ページの特集記事を掲載した。1992年4月米ロサンゼルスの騒乱で約1万人逮捕、2005年10月のパリ郊外で起きた大規模騒乱では夜間外出禁止令まで出されたなどの実例を紹介し「いわゆる“民主国家”でも平和的な集会が騒乱となれば政府の反応はたった一つ、それは弾圧だ」と結論づけ、中国のチベット自治区での弾圧行為を正当化した。

 中国メディアの報道などによると、騒乱以後、中国は自治区の民族宗教問題担当の責任者らを解任し、騒乱にかかわったとされる僧侶ら計約1400人を拘束するなど、騒乱の再発を警戒し、チベット人に対する締め付けを強化している。


 同時に、国際社会から寄せられた批判に対し、中国当局は強硬姿勢を崩していない。12日に海南省でラッド・オーストラリア首相と会談した胡錦濤国家主席は「私たちとダライ集団の戦いは、人権問題などではなく、祖国の統一問題だ」と語り、ダライ・ラマとの直接対話を求める首相の提案を一蹴した。チベット騒乱は沈静化し、五輪の聖火リレーも最大の山場である米サンフランシスコを通過したことで、批判の嵐は終息に向かっていると中国側はみているようだ。

 1989年6月の天安門事件直後、中国は世界中の非難の的となり、厳しい経済制裁を経験した。それに比べると今回は民間の人権団体が抗議の中心ということもあり、中国にとってさほどの逆境ではない。米国や欧州などの議会ではチベット問題に関する決議が可決されたが、経済制裁や文化交流の中止など厳しい内容に踏み込んだものはない。一方でラッド首相のように「チベットは中国の一部」と中国側に改めて表明する指導者も少なくない。

 中国は2007年まで5年連続10%以上成長を続け、世界はもはやこの巨大な工場と市場を無視できなくなっている。米国の低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付き問題に端を発した金融不安にあえぐ欧米諸国はみな、中国と対立できない経済的な事情を抱えているのが実態だ。


 12日に開幕した国際会議・ボアオアジアフォーラムの基調講演の中で胡主席は「中国の国内総生産(GDP)が世界経済に占める割合は1978年の約1%から2007年の5%以上となった。中国経済は世界経済を構成する重要な一部となった」と高らかに宣言、約2000人の世界中の政財界指導者の前に、中国の影響力拡大を改めて誇示した。

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 中国の2007年の国内総生産(GDP)は約24兆7000万元(一元は約15円)で世界第4位。外貨準備高は約1兆5000万ドルで世界第1位。1978年以後、中国の年平均輸入額の平均成長率は16・7%に達し、現在は世界で3位、アジア最大の輸入マーケットとなった。世界銀行が2007年秋に発表したデータによると、2003-05年、GDP成長率に対する中国の経済成長の貢献率は13・8%で、米国の29・8%に次いで世界2位となった。

by deracine69 | 2008-04-14 21:11 | アジア・大洋州  

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