人気ブログランキング | 話題のタグを見る

緊急地震速報 信頼度を高めるために

5月10日 信濃毎日新聞

 昨年10月から運用が始まった気象庁の緊急地震速報システムに対する信頼が揺らぎ始めている。

 8日、関東地方を中心に起きた強い地震では、速報の発表が揺れに間に合わなかった。

 4月下旬に沖縄県の宮古島付近で起きた地震で初めて速報を発表したものの、このときも揺れが起きた後だった。ことし1月に石川県で震度5弱を観測した地震では、速報を出せなかった。

 運用開始以降、システムの能力に疑問を抱かせるようなケースが相次いでいる。

 緊急地震速報の実用化は世界初で、画期的なシステムだ。うまく機能すれば、地震国の日本にとって大きな財産になる。

 政府はシステムの能力向上に力を入れるべきだ。地震のたびに蓄積されるデータや最新の研究成果と、システムが抱える課題を突き合わせ、技術的な改善をその都度図らなくてはならない。

 地震は、最初に小さな揺れ(P波)が伝わり、遅れて大きな揺れ(S波)が来る。緊急地震速報システムはこの速度差を利用する。P波を地震計でとらえて自動計算し、最大震度が5弱以上と推定される場合、震度4以上となる地域を対象に予想震度を発表する。

 昨年10月、放送などを通じて一般への情報提供も始めた。

 今のシステムでは技術的な限界もある。P波とS波がほとんど同時に到達する直下型の地震では、速報の前に大きな揺れが来てしまい、力を発揮しない可能性も指摘されている。

 8日の地震では茨城、栃木両県内で震度5弱を観測したものの、システムは地震の規模を実際より過小評価した。このことが、速報の遅れにつながった。

 加えて、地震波が徐々に大きくなる傾向の地震でもあった。この型の地震は震度を予想するのがもともと難しい。

 このように、今のシステムは、地震の起きる場所やタイプによって有効に機能しない場合があることが明らかになってきた。

 今回の地震では6人のけが人が出た。けが人が出るような地震で速報が間に合わないのでは意味がない。発表基準の境界に当たる震度5前後の予想精度を向上させることは特に急務だ。

 システムのことを知らない人も多く、国民がいつでもどこでも速報を知ることができるようにもなっていない。システムをよりよいものにしていくためにも、普及、啓発活動を強めたい。

by deracine69 | 2008-05-10 23:59 | 行政・公務員  

<< 朝鮮人特攻隊員の祈念碑、撤去へ... 僧侶140人を一時拘束 中国甘... >>