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「夢の原子炉」再び始動できるか もんじゅ

5月17日22時49分配信 産経新聞

 ナトリウム漏れ事故から13年ぶりの運転再開を目指す日本原子力研究開発機構の高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)が、重大な局面に立たされている。10月の運転再開に向けた最終確認の段階になって、ナトリウム漏れ検出器の施工ミスなどが相次いで確認されたためだ。これを受け、経済産業省原子力安全・保安院は19日から約4週間の日程で特別検査を実施する。原油高騰や地球温暖化など世界のエネルギー事情が大きく様変わりするなか、「夢の原子炉」は再び始動できるのか。

■誤警報

 「人為ミスだけで片付けられない。事故後の点検でも見つけられなかった」。4月17日、国の原子力安全専門委員会で鈴木篤之委員長は、平成7年の液体ナトリウム漏れ事故を引き合いに出し、ナトリウム漏れ検出器の施工ミスを厳しく批判した。

 もんじゅでは、3月26日夜、原子炉に近くナトリウムが放射能を帯びる1次系配管で、ナトリウム漏れの誤警報が発生。28日にも誤警報が発生した。

 誤警報を起こしたのは日立製の検出器で、予定より約1センチ深く差し込む施工ミスが判明。検出器の先端が配管内の開閉弁の一部に接触して曲がり、誤警報を引き起こしたとみられる。その後の調査で、同型検出器のうち計97台で曲がりなどが見つかった。

 もんじゅでは、平成2年の建設時に検出器を設置して以来、機能確認は行われていたが、取り付け状態の確認は一度も実施されていなかったことも判明した。

 さらに、3月26日の誤警報について、地元自治体への連絡が発生から3時間後だった伝達遅れが不信感を増幅させた。機構側は連絡体制の見直しや人事処分を行ったが、13年前の事故直後には、生々しい現場を撮影したビデオを公開しなかったことなど対応のまずさが問題化した経緯もあり、地元住民からは「組織の体質は変わっていない」などと厳しい声が上がった。

■続発するトラブル

 事態を重く見た原子力安全・保安院は、検出器すべての点検を指示し、直接も確認する方針を示した。同機構は6月末までに検出器607台のほか、温度計などの差し込み型の機器など1335カ所の検査計画を発表した。

 しかし、実はもんじゅでは、昨年8月から、別型の検出器でも故障などが原因で誤警報が4回発生していた。1月下旬にも検出器の数値設定が厳しかったことが原因で誤警報が発生している。相次ぐ誤警報トラブルに「本当に直っているのか」と地元では安全性を疑問視する声が収まらない。

 しかし、同機構は検査ともんじゅの最終試験は平行して実施し、10月の運転再開予定は変えない姿勢を崩していない。これには同市の河瀬一治市長が「運転再開のスケジュールよりも、安全安心の確保を優先してほしい」と苦言を呈した。

■燃料劣化も課題に

 同機構が10月の運転再開にこだわる理由について、別の原発事業関係者は「予算や国内外世論の風向きもあるが、一番の理由は燃料の劣化ではないか」と話す。

 もんじゅの燃料に含まれるプルトニウムの半減期はおよそ14年。平成7年12月にもんじゅが事故で停止してから13年近くが経過したことで、燃料の劣化は確実に進んでいる。一部の燃料を交換する計画は、県や敦賀市から了承されたものの、交換用燃料も同時期に製造されているため、劣化の状態に大きな差はない。運転再開が遅れた場合、新たな燃料が必要となり、さらに費用や時間がかかる可能性がある。

 世界では、原油価格の高騰などで、原発を再評価する動きが出始めている。発電で消費した核燃料以上に、核燃料を生み出せるとされる高速増殖炉の実現は、資源の乏しい日本に取ってはまさに「夢」だ。

 しかし、わずかなミスをきっかけにひとたび事故が起きれば、信頼はすぐに崩れてしまう。事故回復と安全確保に費やした13年と、8600億円(18年度末)の費用を無為にしないためにも、確実な安全対策が求められている。

by deracine69 | 2008-05-17 22:49 | 社会  

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