<原爆詩人・峠三吉>未発表作4編発見 遺品のスケッチから
5月30日2時32分配信 毎日新聞原爆詩人、峠三吉(1917~53)の未発表の詩4編が、遺品のスケッチブックから見つかった。1944(昭和19)年の作とみられ、代表作「原爆詩集」の「にんげんをかえせ」「あの閃(せん)光が忘れえようか」などの強い言葉ではなく、ロマンチックで優しい叙情詩。峠と親交があった詩人の医師、御庄博実さん(83)は「丸裸の峠がそのまま出ている」と評価する。
市民団体「広島に文学館を!市民の会」(代表=水島裕雅・広島大名誉教授)が、峠に関する冊子を編さんするため、遺族から贈られた遺品を調べる過程で見つけた。
4編は「心の園」「コラールのために」「雪崩」「梳雲(すきぐも)」。万年筆で書かれ、44年執筆の「花陰」が続けて書かれていたことから、いずれも同年の作とみられる。
峠は学生時代から肺結核に苦しみ、42年にはキリスト教の洗礼を受けた。戦後の労働闘争で怒りの詩を発表したのをきっかけに反戦詩を作るようになり、51年に「原爆詩集」を書き上げた。
御庄さんは「詩には峠本来の優しく少女的な特質が表れている。その優しさが、人間を殺した原爆を許さないという『原爆詩集』の強い訴えにつながったと思う。詩のスタイルの変遷を示す貴重な資料だ」と話した。
4編は同会(082・291・7615)の冊子に収録し、7月に出版される。【大沢瑞季、宇城昇】
◇見つかった「梳雲」
天と地を相ひ抱く
黄昏のとき
夕(せき)陽に浴みせる
裸形の雲ら
たゆたへる水に影して
豊かにも髪梳(くしけず)る
夜に迫る嵐との
婚筵(うたげ)のために
(原文のまま)
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by deracine69 | 2008-05-30 02:32 | 社会